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静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:①伊豆半島

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■12月1日:二日目は昨日の反省から始まった
 布団で寝たのが熟睡の秘訣なのか、たっぷりと眠って7時に目が覚めた。妻はまだ眠っている。意外と妻は肝が座って動じないのか、初のキャンピングカー内でも熟睡したようだ。シェードを開けると外は快晴だった。
 昨夜は気が付かなかったが、道の駅の裏の川沿いには桜並木が続いており、満開の頃を想像してみた。多分、地元の人たちの自慢の風景なのだろう。
 ところが、「桜の花が少し咲いているよ」と妻、信じられなかった。早咲きで有名な河津桜だが、それでも今日はまだ12月、これから冬を迎えるタイミングなのに。道の駅の高齢の女性スタッフに尋ねたところ、今年は狂ったように咲いているとのことだった。やはりそうなのか。
 ここは伊豆半島の南端に近い場所だが、初冬の朝方の桜の花見は寒かった。キャンピングカーに戻ってから直ぐに、FFヒーター(ダイネット用のファンヒーター、燃料は軽油)を稼働させると、約1分後には温風が吹き出し、直ぐにダイネットは暖かくなった。
 そして、コーヒーを飲むために、少しややこしい手順を思い出しながら、ガス台に火を点けて湯を沸かした。ドリップで淹れたコーヒーの香りがダイネットに広がる。トースターは積んでいないので、電子レンジで食パンを温めたが、イマイチの感触だった。オーブントースターは電気を食うので、ガス用のホットサンドメーカーを買うことに決めた。
 淹れたてのコーヒーと温かい食パン、それに目玉焼きとウインナーの朝食だ。足下がポカポカしているせいもあり、今朝も何となくまったりとしていると、妻から「そろそろ出発しようよ」と催促されてしまったが、旅先でのこんな時間も良い。

 そういえば、朝食中に車窓から見えた風景だが、駐車場の奥に停まっていた軽バンの若い二人の女性が、クルマの横で何やら始めている。水を汲んできて、小さな折り畳み椅子に座って、ガスを使って・・・、朝食の準備なのだろう。雨天時はどうするのかと、妻とあれこれと想像するのも面白い。彼女らは多分、旅とアウトドアライフが好きで、将来はキャンピングカーのオーナーか。

 今日は“移動”ではなく“旅”らしいことをしようと、走りながらの車窓風景を見て楽しむことに加えて、色々な所にじっくりと立ち寄ることにした。
 今朝、ロードマップを見ていて気になった海岸があり、ネットでも少し調べたところ、険しい崖が並ぶ南伊豆の海岸では珍しい1200mもの美しい弧を描く砂浜の「弓ヶ浜」で、そこに向かうことにした。
 ほどなくして到着。砂浜を取り巻く道路の横の駐車場には、マリンスポーツのシーズンでもないのに、既に多くの車が停まっていた。駐車スペースの端が空いていたので、そこに停めた。普通車より幅があるキャンピングカーなので、ベストな駐車スペースだった。
 道路から弓ヶ浜の全体を見渡していると、ここは小さな湾になっていることが分かった。左右の高い崖が目の前の砂浜を太平洋の荒波から守っているようだ。砂浜に下りて、その静かな渚を歩いた。
 流木やプラスチック等の漂着物は殆ど見当たらない白っぽい砂の美しい浜だ。
 波のない小さな湾内を幾つかのSUP(スタンドアップパドルボード)がゆっくりと沖に向かって漕ぎ出して行った。ホイッスル(笛)の音が聞こえた。今から海に入るのか、数人のライフセーバーの人たちが何やらトレーニングをしていた。冬に差し掛かった今、海水浴客はいないが、それはマリンスポーツがあるからだろう。砂浜沿いの道では、朝のウォーキングをしている高齢者もいた。静かで良い浜だ。この穏やかな情景はいつまでも見飽きない。
 私の住んでいる近くの遠州灘では1年中、サーファーが波間に漂っているが、この弓ヶ浜ではひとりも見掛けなかった。今朝だけかもしれないが、私にとっては、珍しい砂浜海岸の風景だった。

 弓ヶ浜を後に、伊豆半島の最南端に向かった。
 小さな岬を回ると入り江や漁村が、上り坂に下り坂、その繰り返しの県道16号は石廊崎(いろうざき)に向かう道だ。次第に慣れてきた運転、でも気が付くと、数台の車が後ろに連なっている。ちょっと広い路側帯にキャンピングカーを寄せて後続車に道を譲った。その中の1台のバイクがお礼に手を挙げてくれた。
 かつては、バイクばかり乗っていたため、この、くねくねと曲がり、上下する道では、クルマよりバイクの巡行速度の方が圧倒的に速い。だから、バイクからのお礼は十分に理解出来、道を譲った自分自身を後輩を思う先輩の様だと、ふと、そんな風に思ったりした。
 石廊崎入口の表示から左折して、オーシャンパークの駐車場に入った。キャンピングカーは道路交通法上普通車なので駐車料金は普通車と同額だ。ただサイズが少し大きいため、他のクルマから少し離れ、周囲に駐車したクルマのない場所を選び、駐車した。
 石廊崎灯台には歩いて向かった。日本の灯台50選のひとつの白亜の灯台だ。その高さは決して高くないのは、海面からかなり高い場所に建っているからなのだろう。その前で、妻と灯台、私と灯台の写真を撮った。こういう写真を撮るのは観光客そのものの行動で、少し恥ずかしさを覚ながら・・・、観光客には違いないが、旅の手段はキャンピングカーなので、私自身、一般的な観光客とは違うと思いたかった。その差別化をどう考えて、どう振舞えば良いのか、これからの旅の中で少し考えてみよう。
 そもそもキャンピングカーは、その名称から、アウトドアライフ用のクルマと言う印象が強そうだが、私の場合、旅に使う頻度が高くなりそうで、キャンピングカーというよりは、トラベルカーか、そんな気がした。今、それに乗って1泊2日の旅をしているが、セカンドライフに入ってからは、1週間、2週間、1ヶ月以上の旅にチャレンジしたい。
 今日から12月なのに、伊豆半島の最南端で晴れているせいか、暑さを感じてTシャツ1枚になり、灯台の傍から続く階段を下りて行った。そこには、伊豆の七不思議のひとつに数えられている奇妙な伝説が残る石室神社(いろうじんじゃ)は崖の割れ目にへばりついているように見えた。道中の無事を願ってから、石廊崎の突端まで進んだ。視界の3/4(270度)の広がりを持つ海原は顔を水平に動かさないと見渡すことが出来ない。その手前のごつごつした岩は海底に噴出した溶岩だ。
 ユネスコ世界ジオパークに認定された伊豆半島は特徴的な自然に満ちており、石廊崎はその代表かもしれない。フィリピン海プレート上の大きな島が海底火山や火山島と共に北上し、本州に衝突。半島となってからも、本州に押し込み続けているそうで、ひょっとしたら将来、箱根や富士山の標高が高くなる?
 オーシャンパークの建物内で少し休憩した後に駐車場に戻ると、クルマの数は増えていたが、遠くからでも大きなキャンピングカーは目立っていて、探す手間は省けた。