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静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:①伊豆半島

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■11月30日:旅の初日はとにかく走ってしまった
 記念すべきデビューの朝、高揚感に満たされてはいたが、運転は、忘れ物は、泊まる場所は、眠れるのか、と不安がない訳ではなかった。ナビはまだ取り付けていないため、ロードマップを持参した。ナビのないドライブは何年振りだろうか。それに、カーコンポもまだないことから、妻との会話をじっくりと楽しむことにしよう。

 静岡県に住んでいるため、東西のどちらに向かうにも、国道1号線(R1)や東名高速を走ることになる。ちなみに、北に位置する長野県や山梨県に向けては、嬉しいことに、ここ数年、新たな高速道路の開通が続いている。伊豆半島の南端は県内の最も遠方の地であり、今日中にたどり着くにはかなりの距離を走らなくてはならないが、運転に慣れるには良い距離だ。それでも夕方には到着するはずだ。
 これまでの旅行の経験から、私は“道中を楽しむ派”だが、妻は“行った先での時間を確保したい派”で、タイプの異なる夫婦だが、今日は妻の好みを優先して、という気持ちもあるが、1泊2日なので、東名高速を走ることにした。
 初の高速道路走行で色々な巡行速度を試した結果、時速90kmくらいがちょうど走り易いことが分かった。動体視力の低下とか、風で車体が揺さぶられることに慣れていないという理由もあるが、のんびりと車窓風景を楽しむには、この速度なのかもしれない。もちろん、前方を走るクルマとの車間距離は余裕を取っている。
 やがて、牧之原(まきのはら)台地に向かう上り坂に差し掛かる。3トンの車重だが、ディーゼルターボのエンジントルクでグングンと上ってゆく。これは気持ちの良い感覚だった。ガソリン車のキャンピングカーではそうはいかないという話を思い出した。そして、上り切った所の牧之原SAに立ち寄った。

 そこで、初めての車内での朝食を取ることにした。妻はSAで買ったコーヒーで、私は冷蔵庫から取り出した牛乳で、いつもと変わらないパン食の内容だったが、実に美味しく、ゆっくりとした時間が経過した。これは「キャンピングカーの旅」で見付けたちょっと贅沢な時間だった。
 TVのスイッチを入れて、チャンネルサーチした。チャンネルの設定は出来たが映りは良くないため、室内アンテナをあちらこちらに置き換えたが改善しなかった。室内アンテナの性能なのか電波が弱いのか、その原因は分からない。そんな時は録画した番組を見れば良いと、録り溜めた中の妻が好みそうなものを選び、それを見ながらの食事を続けた。
 テーブル横の広い窓からは、SAの建物と駐車場内を走るクルマが見えた。彼らがチラッとこちらを見ているようで、見られることを初めて意識し、これまでにはなかったある新鮮な感覚を覚えた。やはり「キャブコン」は注目されるキャンピングカーだ。
 出発直前の点検を済ませ、再び、東名の走行車線に戻った。

 大井川を渡り、日本坂トンネルを抜けると、静岡市街越しに冠雪した富士山が見えた。東名では、このポイントで意識せずとも富士山が目に飛び込んでくる。実は、自宅の2階からも、晴れた日は富士山が、小さい姿だが見ることが出来る。なので、この“トンネルを抜けると大きな富士山”というサプライズは嬉しかった。
 そして清水ICで東名を下りた。伊豆半島に近い沼津ICではなく、かなり手前のここで東名を下りた理由は、ここから東方面に向かうR1には殆ど信号がなく、東名とはあまり時間差がないためだ。
 清水湾の興津(おきつ)埠頭の横を走るR1からは、幾つかの巨大なガントリークレーンが見えるが、コンテナ船は見当たらない。横浜港と神戸港の中間地点にある清水港への入港は夜間となり、昼間は大きな船の着岸は少ないためだ。その後は駿河湾の真横を走る。蒲原(かんばら)や由比(ゆい)からも富士山が、湾越しには伊豆半島が、走りに眺めに、実に爽快な富士由比バイパス(R1)だ。やがて日本三大急流のひとつの富士川を渡り、富士市に入る。ここからの車窓風景には必ず雄大な富士山が入る。
 過去に数回、富士川の河口からパラモーターでテイクオフして、「空の散歩」を楽しんだことがある。田子の浦港から富士市街までは俯瞰出来るが、その奥のどっかりとした富士山は、更に上昇しても見上げる山だった。東側を見ると、沼津まで続く千本松原に愛鷹山塊(あしたかさんかい)、西側は身延山(みのぶさん)の奥に南アルプスが見える。
 眼下のR1を東に進み、沼津を通過した後、伊豆半島の中央を走り抜け、下田までの下田街道(R414)へ入り、南下を始めた。

 空腹を感じ始めた頃、妻が「ひょっとして今、ラーメン店を探しているの?」と、私ほどラーメンを好きでない妻が私に釘を刺した。結局、コンビニに立ち寄り、どの弁当にしようかと迷っていると、「お総菜でも冷凍食品でも構わないよ」と妻。そうかと感心し、冷凍高菜チャーハンを買った。電子レンジでチンして、冷蔵庫から取り出した冷えた飲み物と一緒に、キャンピングカーならではの簡単な食事だったが、安上がりになったことに満足。

 昼食後はさらに南下した。伊豆大仁(いずおおひと)あたりで、妻が「パラグライダーが飛んでいるよ」と目ざとく見つけて、教えてくれた。麓には狩野川(かのがわ)が流れ、岩肌が特徴的な姿の城山(じょうやま)からテイクオフしたのだろう、優雅に「空の散歩」を楽しんでいる様だった。将来的には、キャンピングカーにキャリアを設けて、パラモーターの機材を積めるようにしたい。
 下田街道は次第に上り坂になり、カーブの多い山に入っていった。すると、キャンピングカーの車幅が気になり始め、左右のバックミラーでセンターラインとサイドラインを絶えず見ながら、両サイドに同じ間隔を維持する運転に集中していった。更に山は深くなり、コーナーが続き、木々が道路に迫ってくる。少々疲れた頃、前方に見えた道の駅「天城越え」に入ることにした。
 午後3時過ぎのそこは山陰にあるものの、紅葉は周囲から浮かび上がり、駐車場には落ち葉が広がっていた。道の駅の店舗は、どこを見ても伊豆の特産のわさび関連の商品が並んでいた。そういえば、そこまで走って来る途中の山間の所々に、わさび田が見えた。