火曜日の幻想譚 Ⅴ
508.バズーカ
バズーカが好きだ。
筒状の砲身をさっそうと構えて砲弾をぶっ放し、相手に強烈な一撃を放ちたい。この俺が生まれてきた理由は、それなんじゃないだろうかとさえ思ってしまう。だが、今の時代、どこでバズーカを撃てるだろうか。自衛隊に入れば撃てるかもしれないが、年齢等の理由で入隊するのは難しい。昔、早朝にバズーカを撃って寝ている人を起こす番組があったが、残念なことにもう放送は終わってしまっている。いい方法はないものだろうか。考えているうちに、一つだけ妥協案を考えついた。
暑い夏の日。某所で開催される一大イベントに俺はいた。某アニメのロボットのいでたちをして。
そう、バズーカを持っているロボット等のコスプレをすればいいと考えたのだ。もちろん、コスプレなので本物のバズーカが撃てるわけではない。だが、今一番バズーカを発射する気分に近いのは、これだろう。
続々とポーズを求められる中、俺は何度もバズーカを構えてポーズをとる。被写体となることの気持ち良さと、バズーカを構えることの気持ち良さ。二つの気持ち良さが合わさって、最高にいい気分だ。
気を良くした俺は半年後の冬のイベントにも参加する。夏とは別の、だがやはりバズーカを持ったロボットのコスプレで。このときも好評を博した。
そうして、さまざまなバズーカを持ったロボットのコスプレでイベントに参加していくうち、いつの間にか俺は、「バズーカの人」と呼ばれるようになっていた。
そんなふうにあだ名がつくとどうなるか。こんな俺にもかわいい女子の一人や二人、寄ってくるようになる。俺はいつも写真を撮ってくれる一人の女の子と親しくなり、二人でホテルへと行った。そしていざ、というとき、その子に言われたんだ。
「バズーカの人なのに、こっちは……」