火曜日の幻想譚 Ⅴ
526.夏休み
8月、朝の6時半。
いかにもかったるそうな足どりで、みんなわらわらと公園に集まってくる。言わずと知れたラジオ体操の時間。親に起こされた子たちが、義務感でラジオ体操に勤しんでいる。
午前中、まだ涼しい盛りの10時。
宿題は午前中のうちにと言ったものの、もう雑念でいっぱいだ。おそらく予定よりも全然進んでいない宿題を放り出して、もう昼食の冷やし中華を勢いよくすすっている。
午後、日の傾き始めた6時前。
いい加減遊び疲れたのだろう。昼寝どころか、本気で寝てしまっている。邪気のない寝顔、風鈴、タオルケット。それら全てがだいだい色に染まる時間。
夜、夕食の後の9時過ぎ。
昼寝のおかげで夜中も元気だ。スイカをかじりながら、庭で花火に火をつける。花火の煙と蚊取り線香の煙が、ゆっくりと混ざり合っていく。
深夜、日付が変わるちょっと前。
大人はねぇ、夏休みなんて、なかなか取れないんだよ、もう。そんなことを思いながら、子どもの無邪気な寝顔を見守る。
時はたち、8月も末日。
あれだけ飲んでいた麦茶の消費量も、日を追うごとに落ちてきた。そうめんの束ももう残りわずか。街にはヒグラシの声が鳴り響き、アブラゼミだったものが道路に転がっている。海には恐らく、くらげが群れを成しているのだろう。
そういえば、日差しが傾くのもほんの少しだけ、早くなったような気がする。そろそろ台風がやってくるのかもしれない。今頃、宿題の追い込みをかけている子も多いだろう。でも、8月32日はゲームの中にしか来ないし、あれは恐ろしい事になるから、せいぜい頑張りな。
そんな事を言っている私も、恐ろしい事が一つだけある。そろそろ、電気料金の請求書が届くんだ。連日連夜、エアコンや扇風機を使っていた月の請求書が。
……きっと、えらい金額になっているだろうなあ。