火曜日の幻想譚 Ⅴ
536.蠱毒
人を呪う際に、蠱毒という術を使うことがある。
方法としては、ヘビ、ムカデ、ゲジ、クモ、カエルなどを一つの入れ物で飼い、共食いをさせ、最後に残った最も強力な毒を用いて呪うのだそうだ。
この話を聞いて疑問に思うのは、なんで必ず決まったものが勝つわけではないのだろうかということだ。上記のメンツを見ると、ヘビの圧勝だと思われるのだが。まあ、ムカデもかみつきが決まれば可能性は0ではないし、サソリといったつわものや、ノミやシラミのような団体戦が得意なものもいるかもしれない。だが、ヘビににらまれたカエルなんて言葉があるので、カエルだけは敗退を余儀なくされそうだ。
ところで、蠱毒は人生で1回だけ行うとは限らない。長い人生、呪いをかけたくなるほど嫌いなやつに何人も出くわすことだってあるだろう。そういう場合は2回、3回と蠱毒を使用する機会もあるのではないだろうか。
では、これらを勝ち残ったものたちで、チャンピオン決定戦をやったらどうなるだろうか。人生の最後、お世話になった猛者たちを入れ物に入れて、最後に立っていたものを一緒の墓に入れてやる、なんていうのも面白そうだ。まさに人を呪わば穴二つってやつだ (いや、違う)。
ある老人が、この発想を本当に実行しようとした。これで最後とばかりに、憎いやつを滅ぼしてきた恩のあるやつらを、再び入れ物に入れようとする。しかし、誰も入れ物に入ろうとせず、逃げ出していく始末。どうしたもんかと思い、ネットで検索をかけ、一番上のページを開いてみる。
開いた先は某事故物件サイト。その地図内に表示された老人の家は、恐らくあの逃げ出した虫たちかその仲間に、びっしりと炎のマークをつけられ、痛ましい殺し合いが行われていた旨が書き記されていた。