火曜日の幻想譚 Ⅴ
542.薄皮は天の配剤
卵。
食べる場合は玉子とも表記するらしい。ご存じの通り、あのにわとりの卵。あれって実は、すごくないだろうか。正確に言うと、すごいのはあの卵をゆで卵にしたとき、からの裏にまとわりついている薄皮だ。
あれ、ゆでる前はないのに、ゆでた後になんで現れるんだろうか。しかもちょうどよく、薄皮をむいていけば、ゆで卵それ自体がむきやすくなるようにできている。たまにそうもいかないやつもあるけど、それはご愛嬌というやつだ。食べられるにわとりというか卵にとっては災難だが、これは本当にすごいことではないだろうか。天の配剤と呼ばずになんと言えばいいんだ、というくらいの素晴らしさだ。このすてきな薄皮の機能をつけた担当の神さまはどこだろうか。薄皮の神さま? ゆで卵の神さま? それはちょっといくらなんでも職掌が狭すぎだろう。料理の神さまあたりだろうか、いや、やはり動物のデザインに関連することだから、創造主の仕事だったのだろうか。いずれにしても三ツ星をあげたいレベルだ。
しかもこの利点は、比較的ゆで卵が身近なことだ。食べるたびにそのすごさを実感できる。今日も卵の薄皮とからをむきながら、世界は神さまの配慮が行き届いていることに感謝できるのだ。