火曜日の幻想譚 Ⅴ
560.窓から
授業の最中、教室の窓から外を眺めていた。
暑くもなく、寒くもない、のんびりした良い天気。
水色一色の美しい空に、白くてふんわりとした雲が、ゆっくりゆっくりと流れていく。
柔らかくて心地よい秋の日差しが、まぶたを重くさせ、眠気を誘う。
校庭の中央では、体育の授業でサッカーをしている生徒たちが見える。
ちょこまかと動き回る彼らは、どこかミニチュアみたいに見えて微笑ましい。
おっ、いいパスだっ、あー、オフサイドかあ、残念。
遠くの大地に目を向けると、赤いコンバインが田んぼをじりじりとにじり動いている。
その赤に吸い込まれるように、黄金色の稲が、どんどんと刈り取られていく。
農家のおじさん、今年もどうもありがとう。
校舎わきの電線には、数匹のとんぼが羽根を休めている。
ここ最近は、昆虫たちもめっきり姿を見かける事も少なくなったなあ。
そんなふうに思ってると一匹が急に飛び立ち、どこかへと消え去った。
のどかな風景をのんびり眺めていると、声が聞こえた。
「先生、授業してください」