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火曜日の幻想譚 Ⅴ

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575.『見做川家について』



 暇なので本屋さんに行った。

 特にほしい本もないので、さまざまな本が並ばれている棚の、背表紙のタイトルだけをながめる。そうやって見ている中、日本史の棚に差し掛かったとき、興味深いタイトルの本を見つけた。

『見做川家について』

 見做川家……。なんて読むのだろうか。『見做す』は『みなす』と読むから『みながわ』とでも読むのだろうか。でも、そんな名字、聞いたことはない。
 小説のタイトルかとも思ったが、ここは日本史の棚だ。きっと自分の知識が不足しているだけで、歴史上に見做川さんという著名な一族がいるのだろう。

 そう考えてみると、なかなかいいタイトルかもしれない。前提が分からない、けど、手に取ってみたいという欲望にかられる。さて、見做川家とはどんな家だろうか。武家なのか、神官なのか、それとも一芸一能に秀でた特殊な家系なのか……。僕はその本を手に取り、さらっと適当なページを開いてみる。

「……?」

 そこには、わけの分からない字が書かれていた。具体的には、こんな感じの文字。

『縲?隕句★蟾晏ョカ縺ョ謔ェ鬲斐←繧ゅr蟆ス縺乗ョコ縺怜ース縺上&縺ェ縺代l縺ー縺ェ繧峨〓縲ょック蛻サ縺ョ迪カ莠医b縺ェ縺丈サ翫☆縺舌↓縺ァ縺ゅk縲ょスシ縺ョ螳カ縺ョ莠コ髢薙⊇縺ゥ諞弱?縺ケ縺堺ココ髢薙↑縺ゥ蟄伜惠縺帙〓縲ゆココ髱「迯」蠢?→縺ッ豁」縺ォ縺薙?莠九〒縺ゅk縲ょスシ縺ョ荳?譌上←繧ゅ?谺イ譛帙r蜑・縺榊?縺励↓縺励※縲∵ィゥ隰?陦捺焚繧堤畑縺?※縺昴l繧貞キア縺後b縺ョ縺ィ縺励※縺阪◆縺ョ縺ァ縺ゅk縲』

 思わず、別のページを繰ってみる。

『縲?繧ゅ≧荳?蠎ヲ險?縺??りヲ句★蟾晏ョカ縺ョ莠コ髢薙?蜊ウ蛻サ逧?ョコ縺励↓縺吶k縺ケ縺阪□縲ゅ◎縺?〒繧ゅ@縺ェ縺?→縲∽ク悶?轤コ縺ォ縺ェ繧峨↑縺??ゅ°縺ョ謔ェ霎」縺ェ荳?譌上r霍区沿縺輔○繧九%縺ィ縺ッ縲√↑繧薙?蛻ゥ逶翫b蜿翫⊂縺輔↑縺?←縺薙m縺九?∽ココ鬘槭↓縺ィ縺」縺ヲ縲√>繧??∝?縺ヲ縺ョ逕溷多縺ォ縺ィ縺」縺ヲ雋?縺ョ驕コ逕」縺ィ縺励°縺ェ繧峨↑縺?b縺ョ縺ァ縺ゅk縲』

 しかし、やはりそこにも、同じような不可解な文字列。僕は念のため、本の最後のページを開いてみる。

『縲?郢ー繧願ソ斐☆縲りヲ句★蟾晏ョカ縺ョ莠コ髢薙r逕溘°縺励※縺翫¥繧上¢縺ォ縺ッ縺?°縺ェ縺??よ掠諤・縺ォ蠖シ繧峨?諱ッ縺ョ譬ケ繧呈妙縺、縺ケ縺阪□縲ゅ〒縺阪l縺ー縲√h繧願協縺励∩縺ョ豺ア縺?婿豕輔′濶ッ縺??り協逞帙′髟キ蠑輔¢縺ー髟キ蠑輔¥譁ケ豕輔′謗ィ螂ィ縺輔l繧九□繧阪≧縲りェー縺九?√%繧後↓豌嶺サ倥>縺溯??h縲りヲ句★蟾晏ョカ縺ョ謚ケ谿コ繧偵?√h繧頑ョ玖剞縺ェ譁ケ豕輔〒縺ョ謚ケ谿コ繧貞ョ溯。後↓遘サ縺礼オヲ縺医?ゅ&縺吶l縺ー縲√◎縺ョ繧ゅ?縺ッ蜈ィ逕溷多縺ョ闍ア髮?→縺励※縲∵ーク荵?↓隶?∴繧峨l繧九%縺ィ縺ァ縺ゅm縺??』

 案の定、最後のページも似たような感じだ。

 読めない……とは言っても、僕はそれらの文字に見覚えがあった。いわゆる文字化け。パソコンなどでうまく文字が表示できないときに見られる、文字の体をなしていない文字列。その本は、そんな文字化けでページが埋め尽くされていたのだ。

 意味が分からない。なんでこんな本が堂々と本屋に置かれているのだろう。だんだんと気味が悪くなってきた僕は、震える手で本を元にあったところにしまい、逃げるように本屋を後にした。

 でも、それからというもの、この本のことが気になって仕方がない。なんであんな不可解なものが、本屋に売られているのだろう。気にしすぎて何も手につかなくなってしまった僕は、もう一度あの本屋さんに行くことにした。

 再び訪れた本屋さんで、日本史の棚をくまなく探索する、しかし、その本は棚にも存在せず、店員に尋ねてみても分からないの一点張り。

 仕方ない、最後の手段だ。僕はあの本について、ネットで検索をかけることにする。しかし、その本の情報はおろか、見做川という名字すら出てくることはない。

 じゃあ、いったい、あの本は何だったんだろう。疑問符が浮かぶ僕の目に、あの不気味な文字化けが次々と浮かんできて、僕はいつまでもパソコンの前から動けずにいた。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅴ 作家名:六色塔