小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

火曜日の幻想譚 Ⅴ

INDEX|20ページ/120ページ|

次のページ前のページ
 

581.神さまとお守りと現代社会と



 とある男は、これでもかという程たくさん、かばんに交通安全のお守りを付けている。

 まあ、別に好きにすればいいのだが、なんであんなに過剰に付けるんだろう、とつい疑問に思ってしまう。神様が一柱辺り、どれぐらいのお守りを許容範囲にしているのかは、多分まちまちだろう。力の強い神様なら億単位でも行けるんじゃないかという気がするが、そうでない神様は数百、数十が関の山、という可能性もある。

 そう考えると、一見たくさんお守りを付ける彼の行動は理にかなっているように思える。たくさんお守りを持っていれば、面倒を見きれない神様がいても、別の余裕がある神様が手を差し伸べてくれる可能性があるからだ。

 だが、本当にそれでいいのだろうか。何か、肝心なことを忘れていないだろうか。

 やっぱり神様も人間……ではないが、より自分を、自分だけを信じている人間を救いたいのではないだろうか。そんなとき、自分以外の神様のお守りもジャラジャラ付けている人間を見て、どう思うだろう。
 恐らくだが、神様同士もいろいろありそうだ。ちょっとあの神、苦手だな、とか、ぶっちゃけあいつ、嫌いなんだよね、とか、人間並みにいろいろと思うところがあるに違いない。数ある神話をひも解いていけば、その可能性は非常に高い。
 それに、たくさんお守りをくっ付けている状況だと、神様も自分が手を差し伸べていいか困ってしまうのではないだろうか。ちょうど人間が仕事をするときに、役割分担が曖昧だと生産性が下がるように。

 要するに神様が、いざ、彼を助けようとしたとき、

「あー、助けるときにあいつと鉢合わせすんのやだなー」
「あんだけたくさんお守りあんなら、別のやつが助けるんじゃね?」

ってことで、手を差し伸べない可能性が高いと思われるのだ。

 まとめると、いろいろと手を広げるより、しっかりと1柱に的を絞ったほうが、心証が良さそうだというのが1点。次に、役割分担を明確にして、神様にしっかりとやるべきことを意識させたほうが、救ってくれる可能性が高そうだということがもう1点。
 要は神様にもお守りにも現代社会に通ずる側面がある、ということなのかもしれない。

 なお、先ほどのお守りを山ほど付けた男が、たった今、車にはねられたが、手を差し伸べなかった神である私には、上記の2点からなんら責任はないこととする。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅴ 作家名:六色塔