小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

火曜日の幻想譚 Ⅴ

INDEX|117ページ/120ページ|

次のページ前のページ
 

484.彫像の視線



 僕のすむ都市には、結構な広さのちょっとこじゃれた公園がある。

 彼女も子どももいない僕は、正直、あんまりこの公園に行く用事がないのだけど、最近あまり体も動かしていないし、暇だったので、運動がてらちょっと行ってみることにした。

 20分ほどでたどり着き、広い敷地をぐるりと一周してみてちょっと驚く。大小の彫像が10体ほど点在していて、奇妙な顔で奇妙なポーズを取っているのだ。しかも、そのどれもが、こちらを見ているような気がする。
 こりゃあ、深夜にこの公園を通り抜けるとなると、相当不気味だぞ、そんなことを思った瞬間、体が冷えたのだろうか、急に尿意を催してくる。僕は早速近くのトイレに入り、小便器で用を足そうとした、そのときだった。

 換気用に開けられている窓。そこから彫像の一つとばっちり目が合う。

「…………」

 なんだろう。相手は彫像なのに、下半身は隠れているはずなのに、どことなくあざ笑われている感じ。思わず、視線を別のほうに向ける。

 入り口を間に挟んで、僕と別の彫像とが一直線に重なる。そして、その彫像の視点も、僕をしっかりと見ているような気がする。

「…………」

 2体だけじゃない。天窓から大きいそれものぞいているし、はるかかなたにいる小さいのも、恐らくこちらをじっと見ている。よく見えないがそうに違いない。

 その事実に気付き、思わず体をギョクンと震わせた僕は、止まりかけた尿を無理やり絞り出し、逃げるように公園を後にした。

 それ以来、公園には行っていない。恐らく行くこともないだろう。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅴ 作家名:六色塔