火曜日の幻想譚 Ⅴ
496.麦茶
ある日のこと。
一人暮らしの私はのどが渇いたので、台所へ行って冷蔵庫を開けた。
麦茶が置いてある。そう。昨日、作っておいたやつだ。喉が渇いている私は、喜び勇んでその入れ物を手に取り、コップに注ぐ。
とくとくと注がれていく液体を見ていると、同じ液体のせいだろうか、尿意を催してきた。私は注ぎ終わったあと、麦茶の容器を冷蔵庫にしまって、その足でトイレに行く。
用を足し、コップを持ってそろそろと居間に戻る。そしてしばらく本を読んでいた。そして一口、麦茶をごくりと飲み込んだ。
「…………」
私は次の瞬間、そろそろと音も立てずに窓を開け、外に出ると一目散に交番へ走った。
しょっぱくて、のどがひりひりする。
多分、トイレに行っている間、そのすきだ。
そのとき、誰かに麦茶とめんつゆをすり替えられたんだ。
ということは……、家に知らない誰かがいる。
その後、駆けつけた巡査によって、天井裏に誰かが潜んでいた痕跡が見つかった。