小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
静岡のとみちゃん
静岡のとみちゃん
novelistID. 69613
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

悠々日和キャンピングカーの旅:プロローグ(後半)

INDEX|4ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 

■いきなり買ってしまったキャンピングカー
 話はセカンドライフが始まる約2年前にさかのぼる。
 キャンピングカーショーにはそれまで、2回ほど行ったことがある。それは、自宅近くで開催されたもので、暇つぶしに行ったような感じだった。その時のキャンピングカーの印象は、学生の頃に住んでいた流し台とガス台が付いた4畳半の部屋が走るようなもので、日本中を旅出来るのではと、ちょっと短絡的な、雑駁なものだった。
 そのような私が何故、キャンピングカーのオーナーになってしまったのか、その最初のトリガーは大学生の頃にあったように思う。
 大学では工学部に席を置き、就職先はメーカーで、そこのエンジニアなのかと、そう思いながら勉学に励んでいた。その頃の趣味は、バンド、バイク、旅で、最もはまったのは「バイクでの旅」だった。それが高じて、大学の専攻とは全く異なる旅行業界への就職を考え始め、一時は「旅行業務取扱主任者(当時の名称)」の資格を取るための勉強もやっていた。しかし、バイクに乗る愉しさ、バイクを構造的に見た愉しさのみならず、生活の足や多くのレジャーの分野においての将来性を感じ、とうとう、バイクメーカーに就職してしまった。
 仕事の関係で海外の15ヵ国を訪問した。仕事以外の時間では、あちらこちらを見て回った。それに引き換え、足下の日本をじっくりと見ていないことに気付いた。その一方、キャンピングカーショーでの第一印象だった“キャンピングカーで日本中を旅出来る”の部分が、私自身の中で次第に膨らみ、昇華し、自覚はしていなかったが、いつの間にか、オーナーになりたいレベルまで至っていたようだ。
 キャンピングカーのタイプは消去法で絞り込んだ。
 「バンコン」は車内で立てないし、「バスコン」は大き過ぎるし、そもそも高価だ。「軽バン」での二人旅は窮屈な感じがするし、「トレーラー」は運転も駐車場を探すにも一苦労しそう。
 その結果、残ったのは「キャブコン」だった。広い車内は窮屈な感じはなく、長旅でも十分な居住空間になるのだろう。眠くなれば、テーブルの上を片付けなくても、バンクベッドで寝ることが出来るのは嬉しい。それに、一目で分かるキャンピングカーと言えばやはり「キャブコン」であり、せっかくなので、目立って走るのもいい。
 ぼんやりと以上のようなことを意識していたが、ちょっと立ち寄ったキャンピングカーショップで、いきなり「キャブコン」の購入を決めてしまった。
 新車は1000万円前後で高価過ぎるため、中古車を見ていたところ、十分と思われる装備と満足出来るレベルのものがあり、その場で妻の了解を得て、ショップ側に購入する意思表示と手付金を払ってしまった。
 キャンピングカーのオーナーへのこの一歩は、セカンドライフに向けての最高の手段を手に入れた瞬間であり、その世界に踏み込んだ瞬間でもあった。その時、頭の中では悠々と旅路が広がっていたのだろう、多分そうだったに違いない。これからの物語の始まりになるため、そういうことにしておきたい。
 ショップの販売員に聞いた話だが、来店する人の多くは、パートナーや家族、ペットとのキャンピングカーの旅に興味を持つ人で、彼らは雑誌やYouTube等で調べたり、キャンピングカーショーで最新の展示車両に乗り込んで、キャンパー体験を思い描いたりして、お気に入りのキャンピングカーのタイプを絞り込み、そしてレンタカーで実際の旅を体験して、購入することを決めたならば、車内レイアウトやオプションの要否と仕様を決めて購入に至るとのことだった。
 それに今現在、世の中に広がったテレワークの場所として、走る「自分だけのオフィス」としてキャンピングカーを購入して、自宅やちょっと出掛けた場所で仕事をするビジネスマン・ウーマンがいるとのことだった。
 いずれにせよ、購入資金との相談は必要なのだが。
 私の場合、その一般的と思える購入プロセスの幾つかを省いてしまったが、それでも「ディーゼル車」であること、そして車内は「フル装備」であること、この二つだけは譲れないポイントに決めていた。
 前者については以前、次のような説明をしてくれた人がいて、言い得て妙な内容だ。
 静岡県の牧之原台地に向かう東名高速道路の上り坂で、ガソリン車とディーゼルターボ車のトルクの違いが出るという。ガソリン車は左端の登坂車線の走行を余儀なくされるが、ディーゼルターボ車は走行車線でも追い越し車線でも構わず、グングンと上ってゆくとのことだ。日本中を旅する際は上り坂が多いため、ディーゼルターボ車の方がベターと思われ、加えて、軽油はガソリンより安価なため、旅費の面でも優位性がある。なお新車では、ディーゼル車の方が数十万円ほど高価だ。
 後者について、そもそもキャンピングカーの「フル装備」とは、どういうことなのかをよく知らなかったため、「フル装備」ならば大きなマイナス面はないだろうと、安直に思っていた。
 そして外観については、所々には経年劣化は見られるものの、それらは許容出来るレベルだった。後部には自転車等を載せるキャリアは付いていなかったが、タープ(正式名称:サイドオーニング)が付いているのは嬉しかった。
 手付金を払ってからの約1ヵ月の車両整備中に、キャンピングカーの月刊誌を読み始め、色々と分かってきた頃に納車日を迎えた。