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第五話 くらしの中で

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その2


そんなこんなでどうにか今年三月に三回の接種を終えることができた。
次に襲った怯えは白内障の手術だった。この数年次第に右目のかすみがひどくなりパソコンや運転もかなりしんどい思いをしていた。
白内障のことを話すと、別世界のようにきれいに見えるという人がほとんどだった。しかも手術はあっという間に終わり何てことなかったと皆さんおっしゃった。

只一人近所でよく話す高齢の女性だけは手術の時間が長くかかり、手術しなかった一方の眼の手術はもうこりごりだと言うのを聞いてちょっとびびった。しかも私の担当の医師の名前をいうと、自分と同じとも言った。
その先生はどうだったの?と聴くと、う~んと難色を示した。きれいには見えるようになったけど・・とは言いながら怖いことだといわんばかりに私の気持ちを不安へ導いたのも確かだ。

コロナワクチンと同じく、この手術も予約が近づくと血圧が高くキャンセルした。
延期の予約はできないので改めて診察を受けて予約してくださいと言われ、数日後に決心をして予約をする為に受診した。早々に予約日を決めていただいたので4月20日に手術することになった。どんなに怖くても死にはしないだろうと自分に言い聞かせた。どんどん日が過ぎて流れ作業のように問診日には出かけ、いよいよ入院当日となった。二泊三日の短い入院ではあったが万全の準備をしたのでかなり大きな荷物になった。

入院の日が来て、歩いて五分そこそこの病院までタクシーを呼んだ。
個室を指定していたので広い快適な病室が当てがわれた。八階なので窓から外を見るといつも自宅の庭から眺めている山々が間近に見えて町並も上からの眺めは珍しく写真を撮ってフェイスブックに投稿した。
「友達」繋がりの人達から沢山コメントをいただいた。
夜景もまるで都会のそれと同じくらいきれいだった。

担当の医師は手術当日まで来ず若い医師が確認の為に僅かの時間顔を覗かせた。
その日はシャワーもでき、看護師の勧めで洗髪もした。夕飯が少しの量で配膳されてきた。どれもおいしく完食した。

作品名:第五話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子