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荏田みつぎ
荏田みつぎ
novelistID. 48090
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天界での展開(4)

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そうと決めたら、単純極まりない彼は強い。母の言葉を忠実に真似る。娘の話を正確に真似る。
そのうちに、三人で英語を使って殆どすべての意思疎通が出来るに至った。が、彼は、自分がこうと決めた事にのみ夢中になる性格なので、兎に角、会話さえ出来て自分が思う通りに話せればそれ以上は望まない。母と娘は、アメリカの話など頻繁にしたが、
『America ? If I’d like to visit there, how many hours does it take by Shinkansen or electric car ?』
などと真面目腐って問う。彼女達は、これも冗談だと解釈して笑い転げ、それ以上は話さない。
よって権蔵は、英語をこの国の何処かに在るアメリカという処の方言で、相当に訛っているから標準語しか話さない人は理解不能だと信じて疑わない。
中国語やタガログ語も必要を感じた彼が同様の方法で話せる様になってしまったのです。まあ、考え様に依れば、最強のバカとも言えましょう。他にも私自身どうにも分からない彼の言動は多々ありますが、それはそれとして、それが権蔵なのだと認めさえすれば何の問題もありません。ただ、所長の様に、すべてを理屈付けて解かねば納得出来ない性格・・職業病と言っても良いでしょうが、その様な性格の者にとっては頭が痛いでしょうね。」
「はぁ・・・」
「まあ、そういう訳ですから、彼がバカかどうかなどは、あまり深く考えないのがあなたの為でしょう。・・今、彼はサルと話が弾んでいる模様で、暫くは帰って来ないでしょう。所長、あなたの疑問は、権蔵が任務を終えて再び天界に帰るまで解ける事は無いでしょう。」
「そうは申されましても、千手観音様、私と致しましては天界人類研究所所長という立場上ですね・・」
「諄い! 諄いぞ、所長! これ以上、私に言いたき事有らば、天界総務庁を通じて然るべき手続きを踏んだ上で言上致せ!」
「お、お、恐れ入りまして御座います~~~~・・・・」


「遅いじゃないか、双六。一体何処まで行っておったのじゃ?」
「ああ、ちょいと若い二人の仲を取り持っていたもんでな・・」
「ほほ~、面白そうな話じゃないか。若い二人とは、誰と誰のことじゃ?」
「その話の前に、腹ごしらえだ。お~~い、そこの姉ちゃん、鶏の照り焼きのお代わりだ。それから、コロッケは有るかい?」
「双六、コロッケとは、何じゃ?」
「コロッケてのはだな、ジャガイモを茹でて潰しながら7:3牛豚ミンチ又は10割牛ミンチを混ぜて、分厚い小判型に形作ったものを油で揚げた食べ物だ。あっ、あげる前に衣をつけるところを言い忘れてた。」
「何だかさっぱり分からぬが・・」
「へっへっへ・・ あんたが、この天界でウロウロしている間に、俺は、双六以外の人生を経験してきたからな。分からない事があるなら、何でも聞きなよ。」


 サルと 向かった すぐ後に


「フン! 兎角才能の無い者に限って、人の知らない事を前面に出して得意がるものじゃ。・・お~い、姉さん。先程この男が注文したものは御破算じゃ。おい、双六よ、再会したばかりでまだ時期が早いとは思うが、わしの今の御主人に引き合わせてやる。付いて来るが良いわ。」
「あんたの今の主人って、あの毘沙門天に会わせてくれるのか?」
「おう、そうよ。会って驚くな。」
「何を驚くなって言うんだ?」
「何をと訊くか。兎に角、全てじゃ。このわしが天界でのご主人と決めたお方じゃ。お前の様な小者は、そのお姿を目にしただけで腰を抜かすぞ。」
「えっ、そんなの出来るかなぁ・・」
「な~にをまた考え込んでおるんじゃ。」
「いや、俺は、これまで腰を抜かして、上半身と下半身が別々になった事など無いから・・考えてる というか、想像しているところだ。どうなるんだ? 身体の上の方と下の方が離れたとしてもだな、その両方とも生きているのか? それぞれが『おい、下半身よ。俺はこれから図書館で絵本を見るからな。その間遠くに行くんじゃないぞ。』『遠くに行くなと言われてもなぁ・・よく考えてみろよ上半身。お前が勝手な動きをしている間は、俺には足しかない。見えない聞こえない話せない状態なんだぞ。そんな状態であんた、分別を持った行動など出来る筈などないだろう。』『それもそうだ、下半身よ、あんたの言う事にも道理はある・・が、道理はあるがだな・・見えない筈の足は俺に向いているし、あんたの声も聞こえる。そして、俺の声が聞えるのは何故じゃ・・う~~ん・・何故じゃ・・』となってだな・・ おい、腰を抜かすとどうなるのだ?」
「・・・・」
「教えてくれ。どうなるのだ?」
「いや、もう忘れてくれ。わしが悪かった という事で。」
「其処まで言うのなら忘れない事もない。」
「そうかそうか・・では、行くとしよう。付いて来い双六。」
「はいよ。」
「・・・」
「・・」
「おい、サル。ちょいと腹が減ってきた。あんたが俺の注文を断ったからだぞ。何か喰わせろよ。」
「お前、歩き始めてまだ四半刻も経っておらぬではないか。」
「いいや。もう30分近く歩いている。それに、この急な上り坂だ。脚は掬われそうになるし、必要以上にエネルギーを使わなきゃならないし、食べ物が無いのなら、せめて運動靴でも履かせてくれないか。」
「運動靴とは、何じゃ?」
「運動靴とはだな、西洋の履物のことだ。足を包み込む様になっている草鞋 というか・・」
「おお、そういえば、バテレンがお前の言う様な物を履いておったな。あのような物を足に纏ったなら、指先に力が入らぬだろうに。」
「・・あっ、食べ物が在ったぞ・・・」
「あっ、そこは駄目じゃ。そこへ入ってはならん!」
「どうしてだ?」
「まったく・・、履物の話を自分から始めたくせに、食い物を目にした途端に履物など何処吹く風じゃ。兎に角、そこへ入ってはならぬ。」
「ならぬ と言われれば、尚更入りたくなる・・」
「待てっ! 待てと言うに・・、そうじゃ、この天邪鬼には、まともな言い方では言う事を守らせるなど出来んのじゃった。こりゃ、双六、思うが儘にドンドンと入って行け! 何が有っても立ち止まるな。」
「そうかい。じゃあ・・・」
「あ~~、入るか・・ 一体、どの様に言えば良いのじゃ。・・姿が、見えん様になってしもうたぞ。知らんぞ、わしは・・ 何が有っても知らんぞ・・」

「これっ! 断りもなくこの畑に入り込むのみならず、勝手に一番美味しそうな桃を食べているお前は、一体何者じゃ!」
「・・あ、これは、爺さん。こんにちわ~。俺は、権蔵・・というか、双六というか、二つ名を持つ旅がらすです とか言っても・・笑わないよな?」
「他人の畑に断りもなく入り込んで何をすっ呆けた事を・・う~~、わしが怒り心頭に達する前に、その桃を手から放せ。・・これっ! 放せと言うのに、まだ食べるか!」
作品名:天界での展開(4) 作家名:荏田みつぎ