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自殺を誘発する無為

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 それを梶原は知っていたのか、氷室の聴取が終わって、梶原への逮捕状が出るのを待って、いよいよ踏み込んだ時、部屋の中で梶原の自殺死体が発見された。
 梶原の遺書に書かれていたことによると、彼には反省はなかったようだ。奥さんを殺したのは本懐であり、この自殺が一種の反省のようなものだと書いている。そして、自分が一番後悔しているというか、終わりだと感じたのは、妻が睡眠薬を飲んでいて、死ぬ運命にあったということだった。
 つまりはじの事件において、犬を含めると、何もしなくても死ぬ運命だったものを、行動を起こしたことで、その人に致命的な思いを抱かせ、それが自殺に繋がったということだった。
「こんなに虚しい気持ちになったことは、久しくなかったな」
 と、清水刑事がいうと、
「一体、我々は何をしたというのでしょうね? ひょっとすると警察の捜査で、真相をつぃきとえるということは、どこかで罪悪を形成していることになるんじゃないでしょうか?」
 と辰巳刑事がいうと、
「本当に、やるせない」
 と言って、二人は一緒に大きなため息をつくのだった……。

                  (  完  )



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作品名:自殺を誘発する無為 作家名:森本晃次