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星に願いを:長門 甲斐編

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和泉



「で、何(ど)の「道」を渡せば良い?」

選り取り見取り、割り付く「道」は大量にある
「半人前」の己(おのれ)を抱えて上総一人、仕事を熟すには限界があるだろう

眼線を交わす「兄」と「弟」
初めから終わり迄、和泉と眼を合わせる気がない
豊前は「交渉」も備前に任せる

「勿論、検(あらた)めた「道」を貰う」

「あん?」

割り付く「道」の情報は受け持つ「悪魔」には筒抜けだ
検めもせず闇雲に踏み入れば「面倒」な「道」に打(ぶ)ち当たる

「「面倒」な「道」?」

困惑気味に聞き返す和泉に備前が緩緩、頷く

「「面倒」も「面倒」」
「七面倒臭い事、此の上ない「道」」

当然、「面倒」な「道」は受け持つ「悪魔」は敬遠する
当然、「面倒」な「道」は受け持つ「悪魔」以外、情報を得られない

故に余所の「悪魔」の「道」を横取りしよう等と酔狂な事はしない

其れを眼の前の和泉はしたのだ
御負けに後頭部を盛大に殴られたのでは流石に笑えない

一人、備前のみ笑っている

「待て待て」
「私が足を踏み入れた「道」は・・・」

「道」は無限だ
人間の「欲」が作り出す「道」は無限だ

無限だが、其の全てが「安易」な「道」とは限らない

態態、火中の栗を拾う真似はしない

「「面倒」も「面倒」、僕等が放置した「道」だよ」

道化のように肩を竦めて教える備前に
紫黒色の眼を剥き臍を噛む和泉を傍目に見る上総は思い出す

以前

如何でも好い口調で
如何でも好くない質問を御前はした

「御前は何故」
「そうまでして人間の願いを叶えるんだ?」

「知るか」

俺自身、如何でも好い口調で返したが如何でも好くない

「悪魔」自身、意味が分からない

「誰」の為に?
「何」の為に?

何時か分かる日が来るだろうか?
何時か分かる日が来たら、俺は「意味」に納得するのだろうか?

「計画通り」事が運んで余程、面白いのか
到頭、豊前が吐き捨てる

「精精、貧乏 籤(くじ)を味わえ」

然(そ)うして上総を一瞥して歩き出す
豊前の後ろを付いて行く備前が和泉を振り返り、其の手を振る

次(つ)いで歪める唇から何とも鮮やかな、紅い舌を出す

明白(あからさま)な挑発に易易、乗っかる訳にはいかない
其れこそ半笑い半眼で見送る構えだったが

どんどん伸びていく
どんどん伸びて、縮んでを繰り返す舌に眼の玉が飛び出る

「待て待て待て待て」

慌てて「制止」を促すが

「!!待てい!!」

到頭、耐え切れず叫ぶ

「!!貴様!!」
「!!貴様、舌の長さが尋常じゃないぞ!!」

「!!剰(あまつさ)え先が、先が裂けて!!」

「蛇」のようだ

口元を手で覆う、最後の言葉を呑み込む
和泉が「ん!、ん!」と、上総の腕に掻い付いて訴える

訴えた所で何なのだ?
其れでも自分同様、驚いて欲しかったのかも知れない

だが、其の期待は見事に裏切られる

「気にするな」
「俺のも似たようなモノだ」

何と云う衝撃告白(カミングアウト)

街路灯の下(もと)、思考停止に陥(おちい)る和泉を余所に
上総は豊前、備前とは逆方向に歩き出す

思いの外、和泉の「悪魔稼業」開業が早まったが致し方ない

「契約」を望む「人間」に接触する以上

避けられない「存在」がある
避けなければならない「存在」がある

「死神」

「人間」の成れの果てが「死神」なら「死神」の成れの果てが「人間」だ

「和泉、賢くなれ」

足を止め振り向く上総に
遠回しに「馬鹿」と言われた、と過剰に反応する
和泉が直ぐ様、噛み付く

「!!失敬な、私は賢いぞ!!」

其の「馬鹿」じゃない
釈明するのも億劫なのか、上総は言い方を変えた

「和泉、狡賢(ずるがしこ)くなれ」

取り敢えず言葉の意味を考えるも
結局、考えるのが苦手な和泉は曖昧な返事で言葉を濁す

「お、ぉう」

漸く自分の元へと歩き出す和泉を待つ、上総が続ける

「けちが付いたが何はとも有れ「初」契約だ」

「契約」の前には「道」がある
「道」の前には情報を検(あらた)める必要がある

今更だが和泉に振り回されるのは毎度の事だ

故に憎憎しい
故に愛愛しい

「頑張れ」

白(し)れっと言い捨て背中を向けた上総を和泉が呼び止める

「なあ?!」
「今、どんな顔してる?!」

「如何いう意味だ?」

聞き返すも立ち止まる気はないのか、上総は足を進める

「否否(いやいや)」
「至極、御前らしからぬ台詞(せりふ)を吐いたよな?、今」

一歩一歩、跳び歩く
和泉が上総の背後に辿り着くや否や、にやにやしながら促した

「なあ、此方を向けよ」

「断る」

「そんな事言わずになあ、なあ、なあ」

途端、上総の歩幅が早くなる
和泉も負けじと追い掛けるが如何にも追い付かない

多少、身長差はあるものの
圧倒的、円規(コンパス)の差に腹立たしくなる

仕舞いには雑居な建物(ビル)の角を曲がった瞬間、黒衣の外套の姿を見失う

否、姿を消しやがった

「!!上総、狡いぞ!!」

闇夜に吠える和泉に白白しい声が燃える火に油を注ぐ

「覚えておけ」
「其れが「悪魔」というモノだ」