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星に願いを:長門 甲斐編

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長門



「父親」は破落戸(ごろつき)
「母親」は水商売女

「姉」は女暴走族(レディース)の退役(たいえき)総長
「俺」は暴走族の現役特攻隊長

何処も彼処(かしこ)も生まれた時から変わらない、見慣れた景色
何奴(どいつ)も此奴(こいつ)も生まれた時から変わらない、見慣れた顔

其れでも感覚があった

「何か」が足りない

其の、「何か」が分からないのに
其の、「何か」が足りない不思議な感覚

「父親」が死んだ
「母親」が死んだ

其れでも「姉」がいる
其れでも「仲間」がいる

其れでも俺には「何か」が足りない

低空に延延、居座る白雲(しらくも)を仰ぐ
原(動機)付 自転車(バイク)の後部座席

射る「熱」に気が狂いそうになる

毎日
毎日

誰の為に
自分の為に

「檻」に入る為に「檻」に向かう
気が狂いそうになるのは何も「熱」の所為(せい)だけじゃない

胸糞悪い日日に
胸糞悪い輩(やから)相手に発散する日日

正に共食い

「猛獣」犇(ひし)めく「檻」に、「彼奴(あいつ)」がやって来た

何の因果(いんが)で
何の因縁(いんねん)で此処(掃き溜めの吹き溜まり)に流れ着いたのか

明白(あからさま)に自分等とは毛色が違う

弾(はじ)く衝動よりも「何か」を得たいと思う衝動

「何か」は言葉には出来ないが
「何か」は理解している

俺の世界に足りない「何か」、其れが理解出来た

落書きに上品も下品もない
案の定、下衆な主義主張だらけの黒板

其れでも「お情け」なのか

空いた真ん中、「彼奴(あいつ)」の名前を書き出す教師が
教壇の前、手持ち無沙汰に立つ「彼奴(あいつ)」に自己紹介を促すも

早速、新参者への通過儀礼 宜(よろ)しく
端(はな)から聞く気もなく野次を飛ばす「猛獣」共に注意する

「騒ぐな騒ぐな」

其れで大人しくなる「猛獣」共でもなく
其れでも「彼奴(あいつ)」は挨拶をした後、軽く頭を下げた

俺は俺で

「彼奴(あいつ)」の自己紹介が聞こえなかった事
教師が黒板に書いた「彼奴(あいつ)」の名前の漢字が読めなかった事

多少、苛付いた
多少、苛付いた序(つい)でに前の席で囃し立てる、仲間の後頭部をど突く

当然、本能の赴くまま
振り向きざま噛み付く気満満の仲間を迎え撃つ

眼(がん)を付けたまま
飛ばす勢いで椅子から立ち上がる俺を前に
渋渋、矛(ほこ)を収める仲間に対して自分の方が横暴だったと反省する

「悪りぃ」

取り敢えず謝るも静まり返る教室内
一身一身、身を退く「猛獣」共を余所に一歩一歩、歩を進める

然(そ)うして

「彼奴(あいつ)」の横を通り過ぎ辿り着いた黒板を拳骨(げんこつ)で叩く
其の行動に若干、目を細める教師に訊(たず)ねる

「「甲斐(これ)」、何て読むの?」

物臭く、「ああ」と答えるも
一旦、粉受に置いた白墨(チョーク)を手に取る
教師が「甲斐」に振り仮名を付け足す

「か、い?」

「彼奴(あいつ)」の名前を呼ぶ
「彼奴(あいつ)」が怯える様子もなく無邪気な笑顔で応えた

「久し振り、長門(ながと)」