「ちょこっと街ある記」28 /鳥栖、小城、唐津、武雄、佐賀
そんな唐津市の街の姿としては、12万人に丁度良い街並みで、可もなく不可もなく…です。佐賀県第2の街として発展性はやや鈍いのですが、市役所が新築6階建ての建物に大きく変わり、駅前商店街が旧来のアーケード街から一部分でも新感覚のお洒落な街並みに変身して、この半年ほどで駅前周辺が少し明るくなりました。
その唐津市が全国的には知られているのは、唐津焼があるからでしょう。有田焼(伊万里焼)・唐津焼は有名ですが、「えっ、それは佐賀県ですか?」と言われるのも珍しくないようです。
また、鳥栖市と形は違いますが、福岡市との親密度が高いことが分かります。福岡市地下鉄から乗り入れている筑肥線がもっと活用されれば、唐津市はよりブレイクする予感はあります。
そんな佐賀県観光の目玉になる条件は揃っているのに、どうも今一つ波に乗れないのは「県都・佐賀市との連携」がうまく成り立たっていないのも原因の1つでしょう。
顕著な例が、佐賀市と唐津市を繋ぐ道路と鉄道の整備遅滞で、どう考えても連携していません。道路は多久バイパスが出来たぐらいで数十年経っても道路事情は旧態依然、鉄道は電化しておらず単線、50kmほどの両市間の往来が殆どありません。
若い世代は鍋島家と小笠原家の確執など関係ないでしょうから、もっと往来が容易になるインフラが整備されれば、佐賀市と唐津市は相互に足を向けやすいと思います。
佐賀市民の立場で見ると、有名になった「佐賀バルーンフェスタ」と「唐津くんち」を同時期開催日にした為、佐賀市民は唐津くんちに行かず、唐津市民はバルーンフェスタに来ない。
他県民がその時期に両方のイベントを続けて見るのか…と言えば、どちらか1つを選ぶでしょう。以前のように1ヶ月の間隔をあける方が、トータルすれば県外から訪問機会の可能性は高いと思われます。
佐賀県にとって唐津市は「観光の目玉商品」です。長崎県に多くのメリットがある西九州新幹線の建築費用は国と長崎県に任せて、その分を唐津線の整備に充てて貰いたいですね。
◆武雄市
西九州新幹線の一部区間開業が令和4年9月23日に決まり、長崎駅と結ばれる武雄温泉駅は、佐賀県近辺で脚光を浴びています。それは嬉野市も同様です。
武雄市の人口そのものは小城市と大差ないのですが、街の出来具合が武雄市の方が新しい雰囲気に秀でているように見えます。
この2年間、自然災害に見舞われて痛手を負ったのは気の毒ですが、その話題を除けば武雄市は不思議と全体的な明るさを感じます。
それは高速道路のインターチェンジがすぐ近くにあり、その取付け道路が市の中心を通るバイパスに直結しているので、新しい道路が街の明るい雰囲気を作っているのかも知れません。
人口が5万人にも満たないのに、新幹線の話題が出る以前から惹き付けられる要素がありました。武雄市図書館、温泉街、御船山楽園、宇宙科学館、長崎市・佐世保市方面への道路の分岐点…等々、どことなく街に活気を感じるのです。
佐賀市民の立場で見ると、従来の高速道路に加えて新幹線がやって来ると言う交通インフラの整備が羨ましく思えます。先日の新幹線車両の運搬記事を見るにつけ、武雄市民の高揚感が増したと想像出来ます。
この機会を逃さないように今後の街の発展に繋がる施策を取りたいものです。目指すところは、観光客の増加か、新しいお土産品の開発か、地域の話題つくりか。そう言えば武雄のお土産で思い付くのがあるか…思うに、否です。
当分はリレー形式の新幹線運行なら一度ホームに降りる訳で、開通を契機に武雄のお土産は○○です、と売り出せるような品が欲しいですね。
最近、全国的にも話題になっている「ジビエ利用」の商品などどうでしょう?佐賀県の田舎イメージバージョンの一つとして面白いかも知れません。
また、温泉と言う優れたアイテム、観光資源があるので、それを活かして武雄市全体で取り組む姿勢を作りたい。観光協会や市の観光課ばかりでなく、民間宿泊施設などが一体となったら、嬉野市と連携したキャンペーンなどにも繋がりそうです。
要は佐賀県の西側での稀代のハイライトと言える「新武雄温泉駅開業」に寄り添った企画を考えるのは当然です。
もちろんそんな話は早くから進んでいると思いますが、企画はあっても実行しなければ何もないのと同じです。数年後には「武雄みやげ」の定番が出来ていれば良いですけどね。
◆佐賀市
最近の佐賀市の話題では、佐賀駅前(南北)広場の全面改築が挙げられます。
令和3年10月頃に北口の改築が先行終了。令和4年3月下旬時点で、南口の大規模改築が半分ほど進捗しています。
新しくなった北口はスペースが狭いので、それほど変わったイメージはありません。先日タクシーに乗った際に運転手さんから、車の通行レーンが以前より狭く感じられ、逆に「走りにくくなった」との感想を聞きました。
そして北口広場の改築云々より、「北に向かう道路の幅を狭めたこと」が私のもっと気になる思いに当て嵌まります。
元々あった片側2車線を1車線にしたことは、人間の体に例えたら「血管を狭めた」ことと同じではないでしょうか。道路の広さはその街の成熟度を表すバロメーターの一つです。全国を巡っているから分かるのですが、特に駅前の道路が狭い街の進展は難しい。ある程度のレベルがある都市の駅前道路が狭いのはあり得ないのです。
今、利用する車が少ないので車線を狭くしたと言う理由なら、これから発展する必要は無いと意思表示した道路管理者の「現状維持志向」の表れでしょう。
佐賀駅北口道路は、福岡方面への高速バスが通行していて、他に通れる道路がないので仕方なく通っている様子が伺えます。
歩道を拡幅して歩き易くする意味は分かります。見かけは綺麗になって、自転車通行のレーンも新しく付いていますが、元々あった樹木を伐採してまで拡げた歩道の利用価値はどんなものでしょう。もう終わっているので仕方ないですが、大型バスの通行をわざわざ至難にする歩道拡幅の計画性の有無がこれから問われます。
駅から約1km北に建設中の「SAGAサンライズパーク・アリーナ」への道すがらの歩道としての拡幅なら、今後は歩いて楽しい仕掛けを造らないと、単に歩くだけなら今までの歩道でも良かったのです。
勿論これから歩道の活用案を審議する予定なのは知っていますが、新しくて楽しいプロムナードを創生するためには、おじさんたちの既成概念での案ではなく、若い人達に参加して貰い、使用する人のアイディアを募りましょう。
さて、北口に比べたら南口の面積は思ったよりも広く、人が集える機能的なデザインになって生まれ変わるのは楽しみです。それは結構なことですが、そこに繋がる道路の貧弱さは44年前に駅を移転した当時の計画性の乏しさを表しています。
栄える街の中心域には必ずメインの広い道路があり、ある程度の街の規模ならその周辺に自然と街並みが出来上がります。佐賀市の場合は南北を貫く4車線の堀江通りがその役割を担う資格がある道路なので、佐賀駅が少しでも堀江通りにくっ付いていたら良かったのに、といつも思っています。
作品名:「ちょこっと街ある記」28 /鳥栖、小城、唐津、武雄、佐賀 作家名:上野忠司