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予知夢の正体

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「教授の記憶は、一度半分消えてしまったことがあるような気がするんです。それが私の娘が自殺未遂を起こして、記憶を失った時、教授の記憶の断片を一緒に抜き取ったのではないかと感じました。まるでオカルトのようなお話ですが、予知夢が夢を共有できるのであれば、これも可能ではないかと思ったんです。実際に教授がここでコーヒーを飲んでいる時の様子は、かなり上の空で、話しかけても、まったく明後日の方向を見ていましたからね」
「教授がここに来たんですか?」
「ええ、その時は娘が入院して、命が助かったということでホッとしている時だったので、まさか教授が娘の自殺に関係しているなどということをまったく知りませんでした。そんな時にやってきての不思議な態度だったので、教授の記憶が一部だけ欠落していると分かったんです」
「そうだったんですね」
「だから私は、昨日教授の記憶が半分欠落しているということを聞いた時、最初の時と状況が変わったんじゃないかと思ったんです。つまり、一度忘れた記憶が戻ってきて、戻ってきた記憶を忘れてから積み重ねてきた記憶が消えたのではないかとですね。だから、こちらの計画が記憶を失くしたことで、頓挫してしまうんではないかと思い、あんな驚愕な表情になったんです。あれは教授の記憶がないことを単純に驚いたのでも、記憶が欠落していることが、皆にも分かったということに対しての驚きではありません。あくまでも私の中での恐怖に似たものだったと思ってくれてもいいと思います」
 玲子はそこまで聞くと、今回の事件の大方のあらましが分かってきた気がした。
 それにしても予知夢がまさか人と共有しているなどと思ってもみなかったし、記憶の悦楽が、元からあって、それをショックでひっくり返ってしまうという、表から見ていればまったく分からないことでも、裏に入るとそこがいろいろ影響を与え、マスターの計画に火をつける結果になったのではないかと思うと、玲子は背筋が寒くなるのを感じていた。
 警察はいずれ、マスターを逮捕に来るだろう。
 この後、マスターがもう何も起こさないということも玲子には分かった。その思いをマスターが玲子に告白したことで、事件の真相と、玲子が疑問に思っていたことが氷解した気がしたからだ。
――まだ、何か納得できない気がするわ――
 と思ったが、その理由が分かったのは、次の日のことだった。
 朝起きて、久しぶりに、まだ暑いと感じた。
 あれだけ寒いと思っていたのが、少しだけ暑さを感じたのだ。
 手元にある時計を見ると、そこに写っている日付は、
「十一月六日」
 となっていた。
 同じ時間を繰り返しているのか、それとも、今までのがすべて予知夢の類だったのか、玲子にはよく分からなかった……。

                  (  完  )



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作品名:予知夢の正体 作家名:森本晃次