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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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「オオカミ婆ちゃん」なのか

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幸せそうなSだったが



 3日の夕方、テレビにも飽きて昨夜の残りのビーフシチューを温めていると、ピンポーンが鳴った。

 宅配かと思って玄関に出ると、なんとSだった。
Sとは時々会っているが、しょっちゅうではない。
Sも私と同様、何年か前に大きな病院を退職して、今は関連病院の外科に週2回非常勤で勤めている。
お互い何かうまくいかない事があると、愚痴を聞いてもらうために連絡する程度である。

〈これは何かあったな。新年早々あいつが俺に挨拶に来るはずはない〉
私は警戒してSに声をかけた。
「やあしばらく。明けましておめでとう」
 ちょっと間があって、
「おめでとうございます。夜分突然お邪魔して失礼します」
Sは新年だからなのか、普段と違う堅苦しいあいさつをした。

 しかし、Sのしゃべり方はいつもと違って、少しもつれているようだった。〈Sのやつ、とうとう脳梗塞でも起こしたのだろうか?それなら俺の家に来るより救急車を呼ばなくちゃならない。ま、少し様子を見よう。救急車はそのあとでいい〉

 そして、聞いてみた。
「オイSよ、今頃どうしたの?何かあったの?もしかして奥さんと喧嘩でもしたの?」
不吉な予感に急かされる様に、私は矢継ぎ早に思いつくまま質問した。