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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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「オオカミ婆ちゃん」なのか

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「いや、大したことじゃないんだけどね。今、駅の近くの焼き鳥屋で飲んできたところなんだ。お前もよく知ってる〇〇だ。」〈アアよかった。脳梗塞ではなかった。ただの酔っ払いだった〉

「アア。あそこで飲んでたのか。じゃあ俺もこれから一緒に行こうか?」
「いや、いいんだよ。俺は十分飲んだから。ここまで来たから、ちょっと寄ってみただけなんだよ」
〈これはいよいよ怪しい。Sが新年早々、一人で外で飲むのはへんだし、しかもそのあと、用もないのに私を訪ねるなんて非常におかしい〉

「どうしたんだ。何かあったんだろう」ズバリと私は言った。
「いやね、特別何もあったわけじゃないんだけど」Sは少し口ごもって答えた。
まだ酒が残っているらしくロレツがあやしい。〈相変わらず煮え切らない男だ。悩みがあるなら、早く相談したらどうなんだ〉

「だってお前、新年明けたばっかりで、外で一人、酒飲むなんて、異常じゃないか」
「そうかなあ。俺は別に好きで自分一人、外に出たわけじゃないんだ」
「そうだろう。それが当然だよ。とすると、家から追い出されたっていうわけ?」
「いや、そうじゃない。いられないんだよ。うるさくて」Sはだんだん本当のことを言い始めた。
つまり、Sは家を追い出されたのではなく、自らすすんで家を出た、というわけだ。高齢者の家出である。ちょっと危ない話だ。

 Sには男の子の孫が5人いるらしい。正月になると、それが集合して大変賑やかになるという話は以前にも聞いたことがある。