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HERRSOMMER夏目
HERRSOMMER夏目
novelistID. 69501
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*三行詩抄: 問答歌 ・落穂選 *蝶の唄

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あの女性よ 学生の時に 初めての生物の授業の時に 顕微鏡を覗き すごく精確で美しく写生した女の子がいたでしょう すると あなたは隣にいた彼女の観察絵を 一瞬覗き見て 吃驚していたわよね 上手いんだね 絵が好きなのかい 彼女はとても嬉しそうに表情を崩し ありがとう そんなこと初めて云われたわ なんて照れていたのよ ねえ あの色白の可愛い女の子 今どうしているのかしら というのも 一年足らずで いきなり姿を見せなくなって 大学を退学してしまったというのでしょう それを他の女性から耳にし 以来 あなたはいつも気になっていたのよ 秋田へ帰ってしまったのとか 美大にでも再入学してしまったのとか 可愛かったのでしょう 色白で 一度 地下鉄丸の内線の新高円寺から 朝の通学時に顔を合わせ おや きみもここら辺に棲んでいたの なんて声かけたりして 混み合うラッシュの中 接するように行ったことがあるのでしょう ねえ 長沢佑さん 今どうしているのかしら /名前までどうして知っているのだ 彼女とのそんなエピソードを どこから知り得たのだい まあいいさ 思い出させてくれて感謝する シュヴァルベン シュヴァンツ シュメッターリンクさん いや 人懐かしく かわいい蝶美人さん  ...
   それから あなたが気にしている方が もうひとり いるのでしょう その方とは 以前 京都で知り合い 旅館に一泊し 東京の大学で再会した 奇縁なかた 前田聖樹っていうかたよ。えっ どうして彼の名前も知っているのだ 忘れかけていたのに  ねえ あのかたは大学の四年の時に やはり やむを得ぬ家庭の事情で退学されていた それを あなたは しばらくのちに耳にした 語学的センスが抜群の 飛んでいるひとだった 人への配慮も欠かさず 優れて人情味のある人だった 外国にでも行って水を得た魚のように 活き活きと活躍されているのよね きっと そうに違いないわ  きみは心の読める 得心術に長けたシュメッターリンクだ 忘れかけていた元学友を想い出させてくれ 感謝するよ Danke ! Vielen Dank !!...Der schöne schwalben schwanz Schmetterling くん!!,  >>--
     
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5.【 Prof.イモヌスと騎士文化講義:】Ritter-Kultur:

イモヌス先生の三回目の講義は、こんな内容である。;騎士道とともに12世紀以来、新たな騎士文化の担い手として作法や教養を身に着け、新たな文学の隆盛期がやってきた。つまり、それらは英雄叙事詩とミンネザングである。それでは英雄叙事詩とはいかなるものであったか。

  Seit dem 12.Jahrhundert begann erst als mit dem Rittertum ein selbst-bewußter weltlicher Träger einer neuen der Ritter-Kultur sich gebildet hatte, eine erste Blüte-Zeit ... 
英雄叙事詩として名高いのは作者不明の「ニーベルンゲンの歌」なのだが、これは騎士文化や道徳の影響はまだ薄く、そこに見られるはゲルマン的勇敢さと忠誠心、そして復讐であるというのである。

 授業が終わると岩崎がまた、おい、と聞いてきた。そこで何か残ったものがあったかと聞き返すと、まあな、今日はタップファーカイトゥTapferkeitとかトゥロイエTreueとか、いや、そうだ、ラッヘRacheという語彙が印象深く残ったよと彼は云う。それは良かった、随分と慣れてきたじゃないか、語彙感覚は元々あるのだから、その調子でいくと語学も充分修得できると道之助は云うと「ニーベルンゲン」は文庫本でも購入できるし、あの作品はRache復讐が凄まじいから読んでみたら面白いと言い、さあ、これからどうすると聞くと、今日は偶には雀荘にでも行って時間を過ごしてこようかな、授業も次の時間は空いているしと、そそくさと行ってしまった。そこで道之助は近くにいた沢田に、おい、お茶でも飲みに行こう、清水谷公園の近くに和風喫茶があるからと声をかける、すると彼は、そうするか、でも、二人よりか広美くんも誘ってみたらどうだ、俺のほうは藤尾くんに声をかけてみるから、彼女の笑顔はいつ見ても堪らんからなあと意外な一面を垣間見せて道之助を驚かせた。
    
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  6.【タンダラダイと低きミンネ】:niedre Minne>-

 Prof.イモヌス先生は、これはリートにもなっていて、作者のVogelweideはドイツの12-13世紀の、とはつまり、中世最盛期に、ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハとともに最も傑出した詩人だという。そして彼は200篇近く書き残していて、それまでとは違い庶民的な詩で、これを低きミンネというと解説した。
 するとまた、おい、夏里、niedre Minneとは何だ、と岩崎がベルが鳴り終わるや聞いてきた。彼も少しは興味が湧いてきたらしい。物知りの足しにしたい顔である。うん、低きだから、当然、高きがあると道之助は云った。すると、高きミンネhohere Minneとは何だ、と聞いてくる。そうだな、höhere Minneとはと文学史からの知識を披瀝する。イモヌス先生だって簡単に、そう解説していたものだ。つまり、それまでは貴婦人に捧げて詩をつくっていたのだが庶民的な詩を作ることで、文学も宮廷ばかりじゃない時代がかわってきたのさ。謂わば、宮廷の文化をのり越える、そんなところかな、いいかい、このくらいでと云うと、うん、分かった、政治や体制や時代が変わってゆけば恋の歌も、もっと広がっていったということだな。うん、それなら分かると岩崎は頷いてみせた。そこで、もうひとつ言えばというと道之助はこんなことをつけ足していた。愛のトポスと云ってだね、恋人との出逢いや憧れを秘めやかに歌うのが繰り返し歌われるようになったのだが、そんな似たテーマになっているものをトポスというのだよ、というと、また、そんな小難しいことを云う、と彼は笑って、まあ、Danke!..頼りにしているからなと、行動範囲も広く素早い岩崎は足早に去っていってしまった。
   
 Vgl. 草原の 菩提樹の木陰にある 想い出の場所 / 森の外れの谷間では 小夜啼き鳥が啼き/ 緑の草原に 心弾ませ 出かけてみれば / 出迎えてくれた彼 /それを想い出すと 今も幸せなあたし/ くちづけしてくれたかって?./ もちろんよ 数え切れないくらい/ あたしのくちびる 真っ赤なのが ほら わかるでしょ > ---
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・【鷗外の「諸国物語と芥川龍之介】:
文学の相互作用と類似点:>-