恩寵と秘蹟の物語:マルス:文芸学夜話:ホフマンと幻想怪奇小説
分かると思うが、すこし解説するとだね、あてなるは<貴なる>でね、うまどりは(美鳥)という意味なのさ。
そして第二節にはこんな風に つづいている、と道之助はいうと、徳丸くんは それぐらいは分かるから構わず先へ行ってくれという表情を見せる。
あかあかと 花咲き におひ 眼にぞ染むる 水辺の草地
みどり うるわしく ただよふ 谷間の かげ
愛しの妻(ひと)よ きみの細指の うるわしきかな
きみかげ草をぞ 摘みたまふ
かのひと よろこび あふれるや われをわすれ はなやかな
牧草地にぞ そそがれん されど 妻の さとりてか
疾くぞ もどらむ わがもとに
嗚呼 けれども 悲し わがこころ
いつなる 歓びのうせし そのとき
眼に いりし すべては 息もなく
すべての草は 枯れ草も おなじ
夏の夕映ゑのもと いとも哀しき 奥津城か
愛しの妻よ 愛を 疾く もちさるなかれ
わがこころ かの水辺の草地をぞ 望む
そは 花と花との 咲き匂ふところ・・))
* *--
読み終わるると、道之助は徳丸くんが どんな詩人なのかと訊くから、ヘルティHöltyは生まれは18世紀中葉の1748年だが、早世した詩人でね。
この詩のように単純素朴な詩を書いた詩人で、自然への繊細な感受性あり、また敬虔な感情に溢れた詩人だということもあるが、現代の感覚からは 少し遠のいた感もある。
が、それは時の経過でもあり、人間の意識も情感も時代とともに変わっていくということかな、と道之助が云うと、
それでも いい詩はいい詩として残っていくからね、それは尊重すべきかもしれないと 徳丸くんが云うところなぞは、それこそ、彼の成熟さの証として 尊重しなければならないのだ、と道之助は思っているのである。
桑子道之助氏の優雅な青春交遊・抄 より
*- (( ( ELLERY QUEEN :2.
(.....In den Zeitungen ? Wie heißt denn das ?) :---
新聞紙上でとは、どういうことだい?...
Sieh ,in den Zeitungen haben wir so oft und wie alltags den Namen der kleinen Staaten , zB. Armenien ,Aserbaidschan, gelesen, nicht wahr?
連日のごとく、よく見かけるじゃないか。小国家間の紛争の記事を。
Und in diesen kleinen Staaten gibt es viele,viele staatliche Probleme,
nämlich etwa Stoße der rassischen Gefühlen ,oder Stoße der Religionen, oder Bewusstsein der Selbst-Bestimmungen ,
そして そこには多くの国家間の問題が生じるというしね。
民族感情の対立 然り、宗教の違いによる衝突 然り、民族自立などと・
Und so ist es sehr lärment in diesen Staaten ,wie eben in den ost-europäischen ,sozialistischen Staaten ,wo man die Demoklatie ,Selbst-Bestimmungs-Recht und Freiheit rasch und heftig erwünscht hat. :
まさに、東欧でも、社会主義国家でも、デモクラシーや民族自立や自由が強く望まれているように、これらの国々でも、喧騒としているのさ。
Du weißt ja freilich diese Bewegungen ,nicht wahr, herr Tokumal ?...
徳丸くん、勿論、きみも分るだろう。
Als Michinosuke gesagt hatte, sagte herr Tokumal sofort mit lauter Stimme .
Ach ,das sind ja die Bewegungen im Staat Sowiet Union, nicht wahr?
Ja,ja,das verstehe ich gut, verstehe ich gut!..
すると、彼は すぐに大きな声で反応した。
道之助くん、そのことならぼくも先刻、承知している。
だから、よく分かる。
Aber doch ,habe ich jene Ellery am baltischen Meer ganz und gar nur einmal gehört und gekannt.
だが バルト海のエラリーというのは 皆目、知らんなあ、
聞いたこともないし。
桑子道之助氏の優雅な青春交遊・抄 より
*- ((( 3.
Dann also, Kennst du die drei Staaten am baltishen Meer ,Herr Tokumal?
それなら バルト三国というのなら きみも知っているだろう
Das werden nämlich so-zu-sagen Drei Baltishe Staaten genannt, Du kennst das nicht ?..
Nein ,nein, leider nicht. Das kenn ich auch leider nicht, herr Natsuzato, sagte Herr Tokumal mit lauter Stimme.
いや、あいにく、寡聞にして 知らずということかな、
すまんなと 彼は云って大きく笑った。
Ach so, aber doch , das schadet nicht,sagte Michinosuke sofort und wiederholte weiter.
そうか、 まあ、気にすることもなかろう
Schadet wirklich nicht ,wirklich nicht Herr Tokumal, sagte Michi-nosuke ,während er sich seine Brille abnahm.
Herr Tokumal schwieg dazwischen eine kleine Weile.
Er schien vielleicht etwas darüber ein bißchen zu denken.