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短編集104(過去作品)

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 どんなに楽しい夢でも、どこか最後は自虐的な思いを抱いてしまうのに、その時は姉だけを見つめていた。夢の中の第三者である自分が主役になったのだ。
――第三者としての辛さから解放されたのかな――
 その日の夢は雨上がりのように湿気を感じる。鉄分を含んだような匂いを感じたからだ。しかも目の前の色は赤身掛かっている。夕焼けの赤とは違い、もっと鮮明な色である。
 後ろからトラックが忍び寄ってくることを知らなかった。その時は何も音がしなかったのだ。
――色と匂いと第三者としての苦痛の代償に、音が消えた……
 多治見は果たして夢から覚めることは二度となかった……。

                (  完  )


作品名:短編集104(過去作品) 作家名:森本晃次