続編執筆の意義
ニセ医者は、続編では女を脅迫などしなかった。女を助けようとするのだが、女に対しての立場を悪くするような行動しかとれずに、女からひどい目に遭わされているという意識を持つのは前作と一緒だ。今度は勧善懲悪の話ではなく、ニセ医者の思惑が思い通りにいかないことを憂いているというような作品が頭の中に思い浮かんでいる。
この話を書いていると、坂崎は、
「この小説は、ひょっとすると、今までの自分の人生の縮図なのではないか?」
と感じていた。
時として、最初の作品の主人公である女のように、精神的な面と肉体的な面とでの多重人格性。ニセ医者の稀代の大悪党ぶり、さらに何を理由に自殺をしなければいけなかったのか分からない謎の男、登場人物すべてが一貫しているようで、実はこれほど漠然とした人物描写もないものだ。
続編は、パラレルワールドを描くことで、その曖昧で漠然としている部分の、曖昧さか漠然としている部分のどちらかを払拭するような作品に仕上がるように考えている。
一つ一貫したテーマとして、
「いかなる理由」
と、
「自殺」
を組み合わせた考え方がこの二作品の骨子になっていると言ってもいいだろう。
多目的トイレは、いかなる理由があっても、女性が入っている場所には男性が入れないという貼り紙、さらに、自殺に関しては、時代背景として、最近増えている自殺に対しての考え方を、坂崎なりに考える。それが坂崎にとって、
「続編を書く意義」
と言えるのではないだろうか。
もう一つ続編に入れたいと思っているテーマとして、これも自殺に関連したことであるのだが、
「自殺が多発する時期や。地域があり、自殺は連鎖する」
という発想である。
特に列車での飛びこみなどを考えるから思い浮かぶことであった。
最初に発想が戻ってきたが、これも一種の、
「負のスパイラル」
なのかも知れない。
( 完 )
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