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HERRSOMMER夏目
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novelistID. 69501
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* シュトルム文人交遊録: 恩寵と秘蹟の物語より

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Therefore he said immedeately , Later , later again.! and he paid an attention to his book on the desk.
This fellow!.. You are going quite well. A small voice of Sawano sounded from behind. And it became quiet in the classroom without the voice of German teacher Yokomizo.
*-
Everybody began to speak all at once ,when the lecture was over just 12;00. And it became noisy here and there.
Michinosuke turned his face back to Sawano in the back seat immediately and said, Danke, gestern ! And he went on ,
Could you eat together with me from now on ?...
      桑子道之助氏の優雅な青春交遊・抄 より

 
   *- *- ) 山鳩のロマンツェ :

真夏の猛き けふも また 
 啼きし山鳩 いと わびし
くるまの騒音に混じりて きこえくる濁声は
 あわれなるかな 山鳩よ
なれも あつい暑いと 啼きつるか
  わびし 侘しと 啼きつるか
 午後には 一陣の風が 木の葉を うちならし
   いっぷくの清涼剤にはなるだらう 
けれど 突如 わりこみし蝉しぐれ
 そに かき消され 鷹揚として啼く 汝が声
  閉ざされ きえゆくばかり・・

 あわれ 山鳩よ なれも
  あつい暑いと 啼きつるか 
   わびし 侘しと なきつるか
午後には 一陣の風が 木の葉を うちならし
 いっぷくの清涼剤にはなるだらう

     * - )) ) 蝉しぐれ

 紫陽花の葉の裏 かえしみれば
   張りつきし セミ殻
 大手毬の葉の裏 かえしみれば
    はりつきし セミ殻あり
 柿の葉の裏 かえしみれば
   張りつきし セミ殻ありて
 ときには つがいで仲睦まじく
  あな 仲むつまじき 蝉よ・・

  琥珀色に透けてみえし セミガラには
 すぐにも 壊れかねない あやうさがある
  真二つに割れし背中から脱皮した
   その生命力 それに加うる抒情的造形美
 セミよ 驟雨のやうに降りかかりくる
   蒸し暑き日の音響レイン
  ときには しずしずと 小雨のごとく
   くる日も くる日も 聞かぬ日のなき 蝉の調べ

 嗚呼 驟雨のやうに 音響の調べのやうに
    蒸し暑き日の 日がな 安らぎのとき・・ 

       *- * ) *-

7. 恩寵と秘蹟の物語:ランゲッサー「消えない印」
            Das unauslöschliche Siegel;

  閨秀ランゲッサーの長編「消えない印」が描く舞台は、主に1914年という年で、その年の出来事が回想の中で紡がれていく。だが、このロマーンの主要な筋は、わずか二、三日に限られているにすぎない。
* (( *

 友人の徳丸五十くんが、ふと話の合間に、こんなことを云った。ところで、ランゲッサーといっても、あまり知られていないが、代表作はなんだい。と聞くから長編にはこんなのがあって、興味がなければ面白いとは言いかねるかもしれないな。すると、どんな内容かと聞くから、掻い摘んで云うと、洗礼と秘蹟の物語だな。・・・もう少し、詳しく聞かせてくれないかと徳丸くんが迫るから、そうだな、もう少し足せば、罪と恩寵とキリストによる救済の物語と云ってもいい。それだけじゃ、もの足りん、形式ばった言い方で、というから、そうだな、舞台はラインヘッセンの町で、時は1945年。 主人公はラザルス・ベルフォンテーヌという至って打算的な男と云ってもいい。というのも、彼が7年前に洗礼を受けたのも、自ら進んで受けたのではなく婚約者が信者だったからであり、その娘の父親が会社を経営していて裕福だったからなのだ。それで、と徳丸くんは先を促すから、そうだな、洗礼を受けた経緯はともかく、
それは秘蹟には違いなかった。彼は結婚後は良き商人として、忠実な夫としてまた一人娘の父親として、一市民としても、慈善家としてもある意味で信心深く人生を送っていたのだ。うん、なるほど、だが、まだ型にはまった域を脱けていないのが気になる、それでどうなんだいと徳丸くんが、いやに、食いついてくる。はて、彼も信者で洗礼を受けているとはまだ、聞いていないが、まあ、それは今回はいいだろうと先に進んでいく。
 
  ところがだね、主人公は消えない秘蹟の印としての洗礼を記憶に昇らせるたびに、ある落ち着かない不安に陥ってしまうのだ。それはどうして、と徳丸くん。そうさな、というのもだね、洗礼記念日に約束した盲目の男が現れなかったことが、彼にまだ、落ち着かない不安となってのこっているからで、それを回想するたびに、暗いものから抜けきらないでいるからなのだ。というと、まあ、それだけではまだ、よく理解できかねるが、夏里くんの興味がそんなところにもあったということだけは認識できた、よかったよ、ひとつの大いなる収穫でもあるからね、と言って道之助を驚かせたばかりか、却って、徳丸くんにもロマン派のテイークにばかりでなく、広く知の幅もあることに気づいて、道之助も喜んでいるのである。 桑子道之助氏の優雅な青春交遊・抄 より

        *- * - )

8. シュトルム文人交遊録 :T. Storm

西山とんぼくんは学生時代の友人である。とんぼは彼の好んで用いた筆名で、ある時、道之助は話のついでに聞いたことがある。とんぼの由来は何かねと。すると、ぼくの生まれた育ったのは関西はH庫県のT.野市でね、その町はM.露風の赤とんぼで知られているのさ。 それが縁で。そうか、変わったネームだが、印象深く入り込んできたものだから。 
  この西山とんぼくんは、ものをよく書いては小さな冊子に纏めて発表していて、よく送ってきたものである。短歌あり、詩集あり、シラーに関する評論あり、時には小説まで書いていた。旅もよくする彼は、一見、行動派に見えるが根は繊細で、笑みは見せるもののシャイなところもある。評論などは自分の思いが入り込みすぎていて、それはそれでいいのだが、大学院で論文を提出した時には客観性とその構築に欠けていて、その点を突かれて苦労したらしい。

その点、道之助はあまり突出もせず、それぞれⅠ.Ⅱ.Ⅲ.からなる閨秀詩人の超難解な異世界を描いた長い詩篇を三編翻訳して、それを目玉に構築したせいか、また、誰もまだ、わが国では訳していなく、苦心して翻訳していたのも理解してくれて、すんなりと通っていた。