* シュトルム文人交遊録: 恩寵と秘蹟の物語より
いずれの御時にか、女御、更衣 あまた さぶらひたまひ けるなかに、いと やんごとなき際には あらぬが、すぐれて 時めき給ふ ありけり。
In der Regierungs-Zeit von einem bestimmten Kaiser, dessen Name uns unbekannt ist, gab es , unter den Nyougo und Kouy des kaiserlichen Hofes ,eine , auch wenn sie nicht von höher Geburt war, die königliche Gunst genossen hatte,
第一章 桐壺 冒頭から
これは先駆的ともいえる末松氏の英訳からのドイツ語訳である。
女御とは天皇の寝所に侍する高位の女官。更衣は女御の次位で、天皇の衣を代えることを司った女官。
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はじめより、われはと思ひあがり給へる御方々、めざましき者に妬み怨み給ふ。 おなじほど、それより下郎の更衣たちは、まして安からず。
Daher ihre Vorgesetzten , von denen jeder immer gedacht hatte, ;-Ich soll dasselbe sein .- blickte auf sie verdächtlich mit bös-artigen Augen ,und auch ihre Unter-gebenen wie auch Gleich-gestellten waren empört noch.
Aus: Der Kammer der Kili. 桐壺 冒頭 より
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朝ゆふの 宮づかへにつけても、人のこころをのみ動かし、恨みを負ふつもりにやありけむ。
Alles, was sie tat, beleidigten jemanden,
いと、あつしくなりゆき、ものこころぼそげに 里がちなるを、
Wahlscheinlich wusste sie , was los war, sie fiel schwer krank,und kam mehr Zeit zu Hause, und vebrachte dort....
いよいよ、「あかず あはれるもの」に思ほして ひとの誇りをも えはばからせ給はず
* - )) :聖S.病院にて:
外は明るく晴れ渡っていた。西武線で二つめにあるS.落合で下車した桑子道之助は、いくぶん上り坂になっている道を歩きながら呟いていた。気にすんな、気にしても始まらんからな。道之助には先ほど来、聞こえてきてやまない内なる声を振り切るように歩き続けた。
十分ほど歩くと、左手に聖S.クランケンハウスが見えてきた。あった、とほっとしながら入ってみると、案の定、混み合っていた。時計は10時を回っている。待つ時間は長いだろう。それなら天気もいい、気晴らしになると病院内の敷地やら周囲を歩いてみることにした。そんなゆとりは電車を降りるまではなかった。だが、晴れ上がった空の下だ。いまは待つ長い時間をこのKrankehausの敷地内を歩いていれば、中で待つより癒されるかもしれぬ。
道之助は目に入ってくる緑の芝生と白くペンキで塗られた垣根の明るい色彩をこころのうちで眩しく受け止めていた。
やがて、チャペルを目にとめると、道之助は入ってみた。クリーム色の円天井や、つやつやと磨かれた床が目に入ってきた。 気づくと、二、三人の白い衣装に身を包んだ修道女Schwesterがしずかに、祈りを捧げていた。
それを暫らく見入ったのち、窓硝子のモザイク模様が美しい光彩を投げかけてくるのに気付いた。刹那、我を忘れる。祈りに似た敬虔な気持ちが湧き上がってくる。不思議だ、と思ったが、イグナチオ教会に前に一度、入ってみた折り祈りを捧げたのを想い出した。あの時と同じだ。不安な気持ちが少しく和らぎこころが満たされてくる。道之助は暫くして、チャペルを出ると待合室に戻っていった。
まだ幾人もの人が待っている。患者は年配の人ばかりだ。彼のように大学の事務室の紹介で来た若者や、若い女性の姿は何処を見ても見当たらなかった。その日見たひとりの20代と思われる女性を除いては。え、もしや、あのberühmtな女優なのかしら。そこに光が射したように眩しく輝いてみえたものだ。Wie wunderschön !..女優ってなんて美しいのだろう。)) How attractive she is!..魅力にあふれていて、なんて癒されるのだろう))間違えなければ、あの今を時めく女優、W.淵晴子のはずだ。が、確認できたわけではない。だが、そこにだけ光が眩しくさして輝いていたことはまちがいない。
すでに午後2時近くになっている。半日、いや、一日がかりだ・・と思えてくる。別に時間を気にすることもないのだ。
順番は廻ってきた。4時間あまり経っている。診察室に入った。と、体格のいい納賀医師は背中を向けたなりX-レイ撮影フィルムに見入っていた。
道之助は切り出しそうにない背中に頭をさげ、ナースの促すままに椅子に腰をおろした。いかがでしょうか。道之助は執着を捨てきれない人間に戻ったごとく訊ねた。背筋には緊張感が走った。彼の静かな声がドクター・ノウガに聞こえないはずはない。にも拘らず、沈黙を保ったきりであった。先生!と、もういちど口を開こうとした。と、その時であった。ノウガ医師は回転椅子をぐるりと回して顔を向けた。瞬時、眼と目がぶつかった。
吹き飛ばされそうな気がした道之助は飛ばされまいと踏ん張った。強く握った両ひざのの上に置いた手のひらには生温かい湿りが生じてきた。そうして額にはいくつもの玉の汗が滲んできた。
昼行燈のごとき蛍光灯の光が、蒼白く、それを照らし出している。
桑子道之助氏の優雅な青春交遊・抄 より
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* The College Student Days:
In the morning of next day, at the time of German Literature from 10;20 am., Michinosuke was clapped on the shoulder from behinde.
When he tried to look back ,it was Sawano. He asked in a small voice:
How was it going ,Natsusato ?..
As it was the middle of the lecture , he was not able to turn back and speak to Sawano for a long time.
作品名:* シュトルム文人交遊録: 恩寵と秘蹟の物語より 作家名:HERRSOMMER夏目