* シュトルム文人交遊録: 恩寵と秘蹟の物語より
孔子は再び、訊いた。「学ぶことを 如何に 思っているのか」
子路は勢い込むや、声高に云った。
「学ぶことに 実益がありましょうか」すると、孔子は学ぶことの必要性を説き始めた。
In den überzeugenden Erklärungen von Konfuzius gab es nicht nur den Inhalt der Worte, sondern auch seine sanfte Stimme und Intonation.
Und als er darüber redete,war seine Haltung mit voller Zuversicht und sogleich sehr überzeugend.
「人には その放恣な性情を矯正する学びが必要なのだ。 匡(ただ)し、理(おさ)め、磨いてこそ初めて人は有用な人材となりうるのだ」
この孔子の穏やかな声と態度には、聴く者を説得せずにはおかないものがあった。
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Nach einer Zeile ,als seine Energie zurückschlagte, schien es ihm etwas zu denken. Aber er hatte das Schwein und Huhn geworfen, und dann verneigte er den Kopf ,und sagte:
Herzlichst möchte ich bei Ihnen lernen !..
然し、子路には反抗の気力が残されていて突っ立ったまま、暫く考えている様子だった。が、やがて頭を垂れると、
「謹んで教えを受けたい」と降参したのである。
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Der junge Mann war nicht nur von seinen Wörtern ,sondern auch durch die große des Konfuzius überwärtigt.
Auf dieser Weise ,am selben Tage, betritt Zilu die Tore des Konfuzius und wird er sich zu seinem Schuler . )) )
最初、勢い込んで出向き、怒鳴るように答えていた子路も、孔子の姿をみて、最初の言葉を聞いたとき、おのれとあまりに隔絶した孔子の偉大さに圧倒されたのである。
こうして即日、子路は孔子の門に入り、師弟となったのである。
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Dann war Konfuzius noch nicht vierzig Jahre alt.
このとき孔子は、40歳になっていなかった。
Vgl./
一方の子路は、眉の太い目のはっきりとした青年で、賢者の孔子を辱しめようと、左手には雄鶏をもち、右手には牝豚を引っ提げて押しかけてきた。こうして、けたたましい動物の叫びとともに、目を怒らして飛び込んできた子路Ziluと温厚な孔子Konfuziusの間に、問答が始まったのがここに記した一節なのである。
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・【井上靖と散文詩集】:Sein Prozess in Gedichte-Sammlung:
小説家の井上靖は「猟銃」や「氷壁」、「敦煌」や「孔子」などを書いた著名な作家だが、詩人としてもまた、よく知られている。
彼は生涯にわたり数々の散文詩を書き残しているが、氏の詩と物語の相対性は独創性に富み、(因みに、ドイツの閨秀ランゲッサーの作品にも同様な相対性は同時期の詩と小説にみられるが)、特異な作家、兼、詩人と云ってもよい。次に記したのは、氏の散文詩人としてのプロセスを詩的に簡略して書いてみたものである。
・小生 第一詩集を 出しまして 38篇からなるものでして
その名は 「北国」というのです 小生 51歳の時でして
「闘牛」という小説で A.賞を頂いてから 8年目の時だったのです
これは 図らずも 注目されまして たちまち
センセーションを 巻き起こしていたのです
小生 多忙な作家生活のなか 長年にわたり 書きとめていたのです
これらの詩には 小説のモティーフと 重なるものもありまして
「猟銃」は その良き例でして 「あすなろ物語」の
千本松での 格闘の場面に使われた「海辺」も 含まれているのです
小生 応召の経験もありまして この詩集には
24篇が 含まれておりまして ですから モティーフは
戦争関係のものが おおくありまして いうなれば
戦争詩といってもよい ものなのです
モティーフとなったのは 寂しさであり 悲しみであり
苦悩や運命や 安らぎであり とりわけ 「猟銃」では
人生の寂寥であり 「海辺」では 格闘と別れであり そして
青春時代の 無頼といったものなのです
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小生 第二詩集を 出しまして これは 第一詩集から 数えて
五年後のことでして その名は 「地中海」というのです
その名はのとおり これは 海外旅行の見聞を
モティーフに 認めたものでして 孤独者の 魂の詩でもあるのです
小生 第三詩集を出しまして その名は 「運河」といいまして
ここでも 海外旅行が モティーフでして 然し
異なるのは 中国旅行から得た 歴史や風土
文化の鎮痛さを 内面から みたものなのです
小生 第四詩集を書きまして その名は「季節」といいまして
ここには 悲しい調べが ありまして 幼児や青春の追憶
旅と季節 そして 晩年の静かな 想い出
逞しくも 悲しい思いを 綴っているのです
小生 第五詩集を書きまして ここでは
シルクロードの旅から生まれたものが 含まれておりまして
その名は 「遠征路」というのです
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小生の これらの散文詩集は ほぼ 4, 5年ごとに 出ていまして
詩作の初めのころは 犀星や朔太郎
三好達治の詩集を 読みまして とりわけ 散文詩は
達治の「測量船」から 感銘を得ていたのです
Vgl./ 井上靖には他に、第六、第七、第八詩集があり、書かれていくのである。
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・芥川龍之介の「鼻」 より:
禅智内供の鼻といえば、池の尾で知らぬ者はない。という書きだしで始まる「鼻」は漱石の激賞によって芥川がデヴューした作品だが、漱石はその際、このような作品を書いて突き進みなさいと励ましている。
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作品名:* シュトルム文人交遊録: 恩寵と秘蹟の物語より 作家名:HERRSOMMER夏目