端数報告6
『おまけに、見よ。「パンダ・コパンダ」他のアニメは説明が何もないのに対し、「柳川」には解説がつけられているではないか。これを読んだ島田がそれをぜひ見たい、この上映を逃(のが)したらその〈もうひとつの「ナウシカ」〉を見る機会は二度とないかもしれない、だから見逃すことはできぬと考えることがなかったとは云えまい。つまり、島田が「柳川」を見なかったとは、誰も云い切れないのである』
見ねえよ! だからそんなもんおれは見ねえよ!
『このような資料から見ると、島田が見たのは「柳川掘割物語」の方だったという強い印象は免れない。もし、二作のスチルを並べて見ることなどができれば、この比較はもっと明瞭になり、公平になるだろう。何故なら、島田がガンジーの伝記映画とか、「黄金のアデーレ」のようなマジメな映画もちょっとは見ている事実を知っているし、柳川の水の起源も知りたいからである』
うわあああん。だから、『パンダ・コパンダ』を見たときにそいつの予告編を確か見たように思うんだけど、「うげえ」と思っただけなんだよう。信じてくれえええ――と、また話がそれてしまったが朝鮮戦争でアメリカが細菌兵器を使った証拠などありません。ないもんだから、『悪魔の飽食』の森村誠一もあったことにするためにその続編でデッチ上げをやったという話がある。
画像:写真のワナ悪魔の飽食誤用事件
この画がそれだが、本が売れたから何から何まで嘘で固めた二冊目を出し、さらに三冊目をやろうとしたところで新聞が暴露したものとわかりますか。〈七三一〉がやってないことまでやったことにするため他から持ってきた写真に嘘の説明をつけて載せたり、〈七三一〉の細菌兵器が朝鮮で使われたことにするために、米軍機から落とされながら割れずに済んだ〈七三一〉のものそっくりな蚤入れ壺の写真があるものとして本に書いた。しかしまったくの嘘。
というのが読んでわかるでしょう。この『写真のワナ』が出た1984年頃に森村は非難ゴーゴーと受けていたのを、新藤が真相は意図的でない誤用だったんだということにして擁護してるのもわかると思うが、写真の中にある文字を消したりなんだりしておきながら誤用ねえ。やれやれ。本が百万部売れりゃ、印税が少なくとも1億だからな。
今回のアタマに引いた『黄金のアデーレ』は、オーストリアのユダヤの家からナチスが奪ったクリムトの絵をホロコーストを生き延びたその家の娘が取り戻そうとした実話を映画にしたものだ。美術館はしかしその絵を「ナチス・オーストリアが収奪したもの」でなく、「絵のモデルのアデーレが祖国オーストリアに遺贈したもの」というように話を作り変えていたという。〈ブロッホ=バウアー〉の名を出すとユダヤ人だとバレるので絵の題名は変えていた。
森村誠一が使ったのと同じ手だ。それが誤用でひとつだけならそれだけ訂正すればいいが、何もかもが嘘なんだったらシラを切り通すしかない。そして自分がやっているのは、国の国民全員のための闘いなのだと称する。森村もむろん捏造がバレた後で、同じように自己正当化の言葉を並べた。
評価額は1億ドル。おれはその絵が載ってる本を文庫で持ってるんだが、すげえ。これはドルで1億と聞いても誰もが納得するよな。
画像:クリムトの絵・文庫本より
対して平沢の絵ときたら、『刑事一代』のドラマに出てきたもんで見せるとこう。誰がカネを出して買うんだ。
画像:平沢の絵・刑事一代ドラマ第1部より
シャバにいたならこれで人間国宝ねえ。《横山大観に師事した関係から、富士山の絵は一流》なんて新藤は書いていたけど、大観の富士は図書館で画集を借りて見てみるとこうだ。
画像:大観の富士・『横山大観の全貌』より
アフェリエイト:横山大観の全貌
そして大観は、「『平沢が弟子』というのはあの男のいつもの嘘で弟子なんかじゃない」と言っていたという。1958年、つまりセーチョーが『小説』を書く前の年に死んでるんだが、それについては『平沢が犯人だ』と語る章で。今は画だけを見せておきます。
画像:遺書帝銀事件大観が弟子じゃないと
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――と、ここから先は付け足し。予約投稿を終えた後でテレビの番組表を見てたらこんなものが目に飛び込んできてしまいました。次の土曜にNHK-BSで『松本清張と帝銀事件』だって! しばらく前に地上波でやったものの補綴版のようだけど、そんなもん作ってたんだ。知らなかった。
画像:松本清張と帝銀事件番組表
てゆーか最近地上波は『うる星やつら』くらいしか見てないんだけど。とにかくこれを見る限りでは、帝銀事件そのものよりもセーチョーの〈知られざる闘い〉とやらに重点を置いたもんのようだな。タイムリーだなあ。おれのために笑いのネタを提供すべくNHKが今このときに作ってくれた、神がただそれだけのためにNHKに作らせてくれたもんのようにしか思えんぞ。これを見る限りじゃ。
何しろこの書き直しの次の話もセーチョーの〈知られざる闘い〉について語るものなんですから。てわけで次回に乞うご期待と言うと共に、この番組もよければ見てやってください。どんなんか知らんけど。