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端数報告6

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などとおれは読んで思った。そりゃまあGHQの公安部員なんかにはジャック・ライアンみてえなのがウヨウヨいたのに違いはねえだろうけどよ。保安のことならどんなことにも顔を出して横車を押してきたりもしたろうけどよ。それはそいつがジャック・ライアンだからであって猛牛のように無智なやつがなんで陰謀を企むのよ。それをましてや赤い十月を追っちゃったり、恐怖を総和してただなんて、バカバカしいにも程ってもんが。ジャック・ライアンなんてのはただ自惚れが強いだけのマッチョ(男性誇示)野郎であってピストルを見せびらかすのは人間の器が小さいからで、実際にできることはありゃしねえよ。
 
などとおれは読んで思った。そりゃまあ当時に共産主義は〈今そこにある危機〉であったかもしれないが――などとおれは思ったのだが、『黒い霧』は日本の占領期に起きた大きな事件はこれもGHQ秘密機関の謀略、これもGHQ秘密機関の謀略とセーチョーが考えて書くものである。つまりすべてがマッカーサーの企みの下にライアン、いやアンダースンが仕組んだとセーチョーが考えて書くものである。どれもこれもが前にも引用して見せた、《という断定は何もない。ただ、大層よく似ていた、と云うことは出来る。》というのと同じやり方で。
 
『黒い霧』はすべてのページがあんな文章で埋め尽くされてる。云うことは出来るのだからどれもこれもが謀略だったと云うことが出来る。そしてやつらの本当の狙いは、ということになるのだが、もう結構長くなったのでそれは次回に。
 
作品名:端数報告6 作家名:島田信之