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端数報告6

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と言ってふたりの関係が逆転。けれども結構、バラさなくてもこの娘がサクソン系のプロテスタントなのはまわりの誰の眼にも一目瞭然らしいのだけど、みんなが鼻で笑いながらジョゼフに対し「お前がそう言うのならそういうことにしといてやるよ」みたいな調子で話が進む。
 
そんな映画だった。映画館でこれを見て、ビデオで繰り返し見たおれは、帝銀事件の話を読むたび思うことになる。アイルランド系のアメリカ人は、GHQ実験説の話を聞けば「サクソン系のプロテスタントがやりそうなことだ」と思うんじゃないかな、と。
 
『リーサル・ウェポン2』の悪役みたいなやつがと。あのくらいにわかりやすい悪役は、非常にわかりやすくてよろしい。もちろん黒人も思うだろうし、イタリア系とか、中国系とか、他にいろいろ。
 
むろん戦争中、収容所送りとなった日系人も思うだろうし、今になってその是非を問う現代人もまた思う。アイゼンハワーが軍人だった頃の軍ならやりそうなこと、とか。
 
しかしそれが事件当時のGHQ公安部門にはありがたくない。アメリカ国内だけでなく、カナダやメキシコで信じられ、中南米で信じられ、カリブ海で信じられる。イギリスやフランス、ギリシャとか、スウェーデンやスカンジナビア、スケベニンゲンの人間にまで信じられる。
 
そしてアフリカや東南アジアだ。『リーサル・ウェポン2』の悪役みたいなやつらに支配されてきたそれらの土地は、日本の敗けで戦争が終わってまた植民地になった。なったが独立運動が高まり、どこでも抵抗が起きている。
 
それがこの時代のはずだ。独立運動をやってる者にも帝銀事件のGHQ実験説が信じられ、「オレが毒で死んだなら暗殺されたと思ってくれ」と〈革命の闘士〉さんが衆に向かって叫んだりする。
 
結果的に世界中で共産主義に転がる人間が増えていく。GHQの公安部門が本当に憂慮したのはそれではないか。
 
などとおれは考えた。そしてスターリンや毛沢東、金日成(キムイルソン)までもが話を聞いて「マジかそいつは」と言うことになること。
 
「わかりませんがそういう噂があるようです」
 
「私を暗殺する方法を研究してるということなのか」
 
なんて話になってしまうこと。GHQ公安部門はそれを何よりも憂慮した。
 
のではないかとおれは思った。だからなんとか、根も葉もない噂を消したい。しかしこれに関しては、彼らとしてもできることがない。ただ日本の警察を訪ね、「捜査の進捗はどうなってんだ。お願いだから犯人を見つけて、我々とは無関係なのを明らかにしてくれよう」と請う以外のことはなんにも。
 
ってのが実際のとこなんじゃねえのか? というのが1990年代、20代のおれが考えたことというのを述べたところで今回はおしまい。それでは。
 
作品名:端数報告6 作家名:島田信之