端数報告6
画像:第三の男原作本そいつが悲鳴をあげるのを聞きたいものだ アフェリエイト:グレアム・グリーン第三の男
そう考えた。それが1992年か93年。24歳か25歳のおれだ。図書館では本も借りたがCDも借りた。ジャズの棚に並ぶCDのジャケットの背に『コート・イン・ジ・アクト』と書いてあるのを見つけ、なんとなく手に取ったのもその頃だった。
画像:コート・イン・ジ・アクトCD
これだ。デボラ・ヘンソン・コナントというプレーヤーがハープでジャズを演るという。のだけどただタイトルの意味がまったくわからぬままに響きにカッコいいものを感じて本と一緒に借り出して聴いた。どうせ図書館で借りるのはタダだ。ただそれだけですぐ返し、別のを借りてまた返す。
図書館で本やCDを借りては返し借りては返ししていれば、たびたび帝銀事件にぶつかる。短くほんの数ページ。3分かそこらで聴ける音楽のようなものである。書いてあるのはいつも同じお決まりのもので、
《毒は青酸カリではない。再鑑定で青酸△△△△だと確かにわかっていたのである。これは戦時中〈七三一〉が開発した特殊なもので米軍にデータを持ち去られ、唯一、◎◎大学だけに試料が残っていたのだが……》
《毒は青酸カリではない。再鑑定で青酸☆☆☆☆だと確かにわかっていたのである。これは戦時中〈七三一〉が開発した特殊なもので米軍にデータを持ち去られ、唯一、××大学だけに試料が残っていたのだが……》
という。しかしなんだか毒の名前が読むたび違う気がするな、と思うこともあったけれどそれを深くは気にしない。何より前になんと書いてあったのかちゃんと憶えているわけじゃない。おれの20代はそうして過ぎた。
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のだけど、まあ、こんなところで今日はおしまい。とりあえず同じ話の繰り返しなので、泥縄考察でいい人だけ前に戻って読んでください。それ以外の方は続きを待て。