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端数報告6

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そもそも〈金田哲男=金翼哲〉自体が1997年に自殺しているというこの人物が生前に、友人に、
《ハッキリとは言わず、ほのめかすような感じに》
自分がグリ森一味のひとりだと語っていたという話があるだけ。他のメンバーもどれもこれもが、どうにでも言えるような話を並べて、
「ハッキリとは言えないが」
と言ってるだけだ。人を見たら泥棒と思え。警察官にバンかけられて、
「財布を見せろ」
と言われたらそいつはあなたの財布からカネを抜こうとしてると思え。人を疑いの眼で見る者の目には、地図を見ながら自転車を走らせているだけの人間がパトカーから逃げているように映ってしまう。そう決めつけて疑わなくなる。
 
エンデンブシは、
「本作で描いた犯行グループ各人の役回りについては、それほど外してはいないだろうと思っています」
と、まるで自分で調べた話で裏もちゃんと取ったのだから確かだと言わんばかりの調子で言う。だが明らかに大学時代に読んだ本をそのまま信じているだけだ。前におれは『罪の声』の「上東忠彦」は『闇に消えた怪人』の〈貿易会社社員S・N氏〉だろうと書いたが、あらためて考えるに〈S・N氏〉は上東でなく吉高だろう。「上東忠彦」はウィキに、
 
   *
 
警察でも、現金奪取はカムフラージュで株価操作による利益が目的だった可能性を考えて、事件に関係した企業の空売り・買い戻しで目立った動きをした人物や団体は徹底的にチェックしていた。中でも当時ビデオセラーという会社を運営していた仕手グループは、最重要監視対象として目をつけられていたという。
 
 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%BB%E6%A3%AE%E6%B0%B8%E4%BA%8B%E4%BB%B6
 
と書かれる〈ビデオセラー〉会長の高橋という人物だ。この話は『闇に消えた怪人』にも『「最終報告」真犯人』にも書かれているのだが、不二家の株で100億円儲けた後に謎の死を遂げたことになっている。
 
エンデンブシはこれについて、一応この、
 
画像:罪の声マンガ版2巻立花空売りですよ アフェリエイト:罪の声2
 
〈立花〉のような人物に会って話を聞いてるらしい。小説に〈マジック・タッチ〉の名で出てくる仕立集団が〈ビデオセラー〉に違いないが、しかしその氏に、
 
   *
 
「マジック・タッチ」は八〇年代に登場した仕立集団で、萬堂株と鳩屋株を買い占めて売り抜け、巨額の利益を得たとされる。「株のくら魔天狗」とも呼ばれ、捜査線上に浮上したものの、警察は「シロ」と判断。だが、八五年に犯人が終結宣言を出した二ヵ月後、「マジック・タッチ」の代表が事務所で遺体となって発見され、兜町は騒然となった。死因が心不全であったことから、事件性を指摘する関係者もいたという。
「事件の関連本を読むと彼らが怪しいように思えるんですけど、実際のところ信憑性はあるんですか?」
「ない、ない。そんな有名な仕立筋ならパクられてますよ」
 一蹴されてやや気が削がれた。実際に会ってプロの見立てを聞くと、本の内容が眉唾だったのかと思えてくる。
 
アフェリエイト:罪の声
 
このように言われたらしい。おれから見れば『闇に消えた怪人』なんて、誰に話を聞かなくたって全部が全部眉唾もいいところとしか思えんのだが、エンデンブシは肯定的な話を期待してたのだろう。どうやら実際に取材したらしき〈立花〉氏は、マンガ版や映画版に出てくるそれほど怪しげな人物ではないようで、株価操作の可能性を一応認めはしたものの、
「兜町の噂は当てにならない」
とか、
「たかが数億で社長誘拐したりしないよ」
とかいうことも言ったとおぼしい。本当にした話は株価操作説の完全否定に近かったのではないかとすらおれには思える。
 
しかしエンデンブシは話を素直に取ることはなかった。小説に、
 
   *
 
 原稿が書けるほどの情報ではないが、それでも阿久津は犯人の影を見た気がした。
 
アフェリエイト:罪の声
 
とあるように、都合の悪いことは無視して株価操作説を絶対と見なしてしまう。
「そんな有名な仕立筋ならパクられてますよ」
は、
【有名でない仕立筋ならパクられず済む】
という意味に解釈し、〈ビデオセラーの高橋〉に替えて「上東忠彦」という、やっぱり事件終結後2ヵ月くらいで黒幕に消されてしまう人物を生み出す。
 
「たかが数億で社長誘拐したりしないよ」
も、もちろん、
【数十億か数百億になるならば社長誘拐もするだろう】
という意味に解釈し、「そうだそれに間違いない。絶対間違いあるわけない」と決めつけてしまう。
 
「兜町の噂は当てにならない」
はもちろん〈立花〉の考えでは、
【〈ビデオセラー〉が百億儲けたなんて話はバカバカしい。上限は〈数億円〉であり、数十億や百億はないよ。そんな噂信じちゃダメ】
という意味だったに違いないが、エンデンブシの頭の中ではそうは取られず、
【永田町に黒幕がいれば百億とはいかなくたって80億、いや30億くらいなら】
とかいうふうに解釈され、もうそう決めて変えなくなる。
 
それが、どっかの医者に診せれば、
 
画像:映画ターミネーター妄想の中でも群を抜いてる アフェリエイト:ターミネーター
 
と言われるに違いないエンデンブシという人間だ。信じたいことだけ信じ、自分に都合のいい考えにしがみつく。自分をジョン・コナーかあるいは抵抗軍の英雄カイル・リース、もしくは救いの母サラ・コナーにしてくれる考えだ。
 
人はそういう生き物だ。「新型コロナウイルスの感染が拡大で爆発」と聞けば、それはつまりコロナというのは、東京の感染者数が〈ある数字〉に達したときに自我に目覚め、人類を【抹殺すべき対象】とみなすようになるものなのだと解釈する。
 
それが〈ニンゲン〉という名前の愚かな生物の習性だ。たぶんその昔にどっかで蛇に騙されて変なくだものを食べた結果そのようになってる。
 
とりわけエリート階層が、子供時代に変な詰め込み教育を受けた結果そのようになってる。あなたはジョン・コナーになる者なのよ、と。テレビでしゃべる人間が、
「〈波〉が来る。止めねば。止められる」
とサラ・コナーのようにわめく。しかし顔には黒々と、
【不可避だ。絶対に止めれない】
と書いてある。
【でもいいのだ。来てほしい。数億、数十億人と、死んでいいやつを殺してほしい。そのときオレはジョン・コナーになることができ、「だから言ったろ、オレの言うことを聞かないからだ」と言えるのだから】
と書いてある。前に見せたが、
 
画像:コロナ学者山本太郎
 
ね? この顔がそういう顔でしょ。もうひとつ見せるが、
 
画像:オウム三悪人 アフェリエイト:不肖・宮嶋踊る大取材線
 
こいつらと同じ顔。ハルマゲドンが来たとき尊師はジョン・コナーで、信者はカイル・リースでありサラ・コナーだと証明されると信じ切ってる者達の顔だ。同じように池上彰をジョン・コナーだと信じ込み、自分ら一般市民でもカイル・リースやサラ・コナーになれると信じた者達が今、
 
画像:カイル・リースとサラ・コナー
 
作品名:端数報告6 作家名:島田信之