端数報告６
今日から俺はキツネ目の男
キント（ケビン・スペイシー）によるナレーション「事の起こりは６週間前のニューヨーク。トラックに満載した銃がハイジャックされた。犯人はドライバーに顔は見られてないが、声は聞かれた。大きなミスだ。
俺はケチな詐欺師で、プロのハイジャッカーとはなんの繋がりもないのに、警察に連れて来られた。だけど怖くはない。ムショに送られるようなことはしてないし、いっぱしの犯罪者みたいな顔して滅多にないスリルをたのしんでた。
形だけの面通しだってのは見え見えだ。海千山千の犯罪者をひとっところに集めたのが間違いだ。結果は見えてる」
画像：ユージュアル・サスペクツ面通し アフェリエイト：ユージュアル・サスペクツ
『ユージュアル・サスペクツ』という映画はこのようにして始まる。どう結果が見えてるかと言うと、留置場でワルどもが、
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マクマナス「俺達はイヤな思いをさせられたんだ。だからそれだけのお返しをしてやってもいいんじゃないか？ 実は、眼をつけたヤマがあるんだがな」
キートン「やめろよ、聞きたくもない」
ホックニー「聞くだけは聞いたらどうだ？」
マクマナス「損はさせない。ひとくち乗るか？ ホックニーに訊いてんだ。フェンスターはもう話に乗った。お前どうする？」
キント「おもしろそうだな」
画像：ユージュアル・サスペクツマクマナス損はさせない
というような話をして、ズガガガガンな大事件を起こすことになるわけだ。ひとつ断っておくけれど、これを書いてるおれはユージュアル・サスペクト（いつもの容疑者）じゃない。つまり、何か事件があると警察が、
「あの野郎も一枚噛んでんじゃないか」
と言って、おれが寝ているところに刑事が押しかけてきて、
「○日の○時どこにいた」
としつこく訊くような人間ではない。バンをかけられた経験と言えば、あれは５年ほど前だったかな。ちょっと行きたいところがあって地図を見ながら自転車に乗ってて、
「えーといま過ぎたのが○○だろ。で、この後は○○通りってのに出ればいいわけか。そりゃどの道だ。ああ、あっちか。なんだ遠回りしちゃったな」
と思いつつ角を曲がって、その道に出たところで前後をパトカーに挟まれてしまい、
「アナタ今、変な走り方してましたよね。我々を見て逃げたんじゃないんですか」
と訊かれて、
「ハア!?」
と応えた。事情を話すと渋い顔で通してくれたが、持ち物まで調べられてヤな感じだった。地図を見ながら街を迷走していたおれは、いつの間にかパトカーの追跡を受けてしまっていたのである。
その前にバンをかけられたのは、これはハッキリいつとわかるが2008年の３月末だ。人が賑わう大きな駅の前を歩いていたんだが、二人組のマッポに呼び止められて、
「ナイフとか持ってない？」
と訊かれてやっぱり、
「ハア!?」
と応えた。茨城県の荒川沖とかいう駅の前で通り魔殺人があった数日後のことで、手当たり次第にバンをかけてたんだろう。おれはそれに引っかかっただけに違いないけれど、あのマッポども、財布の中まで調べやがって横暴もはなはだしいやつらだった。
税金泥棒が。ひょっとすると本当は、おれがパチンコ屋を出たとこなのに眼をつけ追いかけてきたもので、
「万札タップリ持っているなら抜いてやろう」
という考えで声をかけてきたんじゃねえのか。どうもそんな感じに見えたな、といま書きながら思うとこだが、おれのバンかけられ体験と言えばせいぜいそんなもんである。『警察24時』とかいったテレビ番組の中でマッポに囲まれているような人間達とおれは違う。見かけも決して、
画像：罪の声ギン萬一味反省会 アフェリエイト：罪の声映画版
こんなようなもんではない。
しかしこれが『罪の声』の〈ギン萬事件〉犯人一味だ。エンデンブシは例の無料電子本で、
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作品を読んでもらった当時の担当記者から「ホンマにこんな犯人おったの？」と聞かれたときは嬉しかったですが、もちろんフィクションですよ。
ただ、本作で描いた犯行グループ各人の役回りについては、それほど外してはいないだろうと思っています。
画像：小冊子表紙
https://books.rakuten.co.jp/rk/d92550f69eaa3f7ebac188b83495e3f2/?l-id=search-c-item-img-09
こう言っている。まるで自分で足を使って調べた綿密な取材によって明らかにしたいくつもの信頼できる新情報を元に書いてでもいるかのような口ぶりだが、実はほとんど『闇に消えた怪人』から抜き出したもの、というのをおれは前にスキャンしてここに見せました。
主人公の阿久津が事件を調べ始めて株価操作の件を当たると出てくるのが、「吉高弘行」の名前。しかしこれは『闇に消えた怪人』に《真の“最重要参考人”》と書かれるひとりの〈貿易会社社員Ｓ・Ｎ氏〉まんま。
そこから〈Ｂ元組長〉そのままな「青木龍一」、〈元警察官Ｚ氏〉まんまの「生島秀樹」、〈元自衛官Ｍ・Ｋ氏〉ままの「谷敏男」の名前がズルズルと芋ヅルに浮かぶ。
これに『「最終報告」真犯人』から、
〈青酸ソーダの入手が可能な男〉
を「山下満」として加え、さらに、
〈「鉄ちゃん」こと末吉鉄之助、本名「金翼哲」〉
を「金田哲司」として加える。それからその連れである、前にスキャンして見せたと思うが、あらためて引用すると、
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鉄ちゃんの周囲にいたキツネ目の男というのは当時37歳だった親族の男性でＫという男だ。
犯罪記録をみると、鉄ちゃんが昭和57年10月25日、住吉署に自動車盗で逮捕された際、共犯者としてＫの名が載っていた。しかし、Ｋは逃亡し、鉄ちゃんだけが逮捕されていた。
鉄ちゃんの弟・山下芳男に確認したところ、Ｋは確かに親族の一人で風貌がキツネ目の男によく似ていたと証言している。
山下芳男はこうも言った。
「Ｋも在日韓国人だが、若い頃から国内でスパイ活動をしている連中とかかわっていた。十数年前、東京の日本橋で行方不明になり、失踪したままになっている。生前、鉄ちゃんと一緒に東京へＫの行方を捜したこともあった。もともと消息不明みたいな奴だったが、どこにいても母親にだけは手紙を出していたが、十数年前からパッタリなくなったままやと聞いています。親族間では北朝鮮へ渡ったんやないかと思ってました……」
アフェリエイト：森下香枝真犯人
と書かれているだけの男を「金田貴志・ただしおそらく偽名」として加える。こんなあやふやな話をそのまま引っぱっているために、
＊
「ちょっと確認ですが、キツネ目の男は何と呼ばれてましたか？」
「タカシです。金田哲司の友人らしいですが、口数が少なく不気味な男でした。軍人崩れと聞いたことがありますが、本当かどうかわかりません」
キツネ目の男に関しては謎のままということだ。
アフェリエイト：罪の声
としか書けず、主犯のはずの曽根達夫にさえ一味の中で〈Ｆ〉がどのようなポジションにあり、どんな役を担っていたか説明できないことになる。