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ネコと少年とお局と

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凜子は考えてる場合じゃないとふと我に返り、さっそくよさげなサイトに登録して、メアリーの里親になってくれる人を探すために募集をかけてみることにした。
「見つかるといいね、メアリー」
凜子はそう言ったが、メアリーはまるで無関心のようにそっけなくそっぽを向いた。
「ったくあんたのことなんだかんね?」
凜子はそう言いた。
しかし、もし見つからなかったらほんとにどうしようかとも思った。保健所などへいって殺処分されてしまうのだろうか?それだけは避けたかった。


そしてそれからあっという間に一か月ほど立ったが、いまだにメアリーの里親は見つかっていなかった。一度メアリーの里親になりたいとコンタクトを取って来た人がいたが、「やはり他のネコに決めました」と連絡が来たため急遽キャンセルになってしまった。里親探しもなかなか簡単にはうまくいかないらしい。やはり里親探しといっても需要と供給があるらしくて人気のネコはさっさと里親に引き取られるが、人気のないネコはいつまでもサイトに登録されたまま取り残されていた。
「決まったネコが誰なんか知らないけどあんたの方が絶対可愛いのにね。わかんない里親だね。後できっと後悔するよ。」
凜子はメアリーに向かってそう言った。
昔の凜子だったらこんなことで一喜一憂することはまずなかったが、メアリーとの共同生活もだんだんと長くなってきてネコに愛着がわいてきてしまっているようだった。メアリーの運命は今自分が握っているのだと思ったら、いつまでも里親が見つからないのが気が気でなかった。
「思ったよりもなかなか難しいもんだね。まあ、世の中こんなもんだ。」
世の中思い通りにはならない。凜子が自分の人生から嫌というほど学んでいた教訓だった。
「でも、あんた負けちゃだめだよ?」
凜子はまるで自分にも言い聞かせているかのようにメアリーのそう言った。


そしてまた一週間が立ちそれでも里親がなかなか見つからなかったので、さすがに凜子もそろそろマンションの管理人にばれはしないかと段々と焦ってきていた。
それはそうととりあえず途中経過を報告しようと清太に電話をすることにした。
「もしもし、野上です」
少年の声が電話越しに聞こえてきた。おそらく清太だろう。
「もしもし、清太くん?わたしよ・・・凜子おばちゃんです。」
「凜子・・・?誰?」
誰ってことないだろ?もう名前忘れたのか?凜子は少し呆れてしまった。
「あのね・・・この前ミルクをそちらのアパートに連れて行ったおばちゃんです。」
凜子がそう説明すると
「あ・・・おばちゃん」
とやっと話が通じたようだった。
「元気?」
「うん・・・元気だよ。まあ、それはそうとさ・・・ミルクのことだけどさ・・・」
「あ・・・ミルク元気?」
「まあ・・・元気よ。」
「あ・・・飼ってくれる人は?」
突然思い出したように清太が聞いてきた。だからそれを今説明しようとしてたんでしょうが・・・子供は話があっちこっちに飛んで訳がわからない。自分に子供がいない凜子にとってはそれが不可解だった。子供ってみんなこんな感じなんだろうか?
「それがね・・・まだ見つかってないのよ・・・あのね・・・」
凜子が中々里親が見つからない事情を説明しようとしたら
「え?じゃあまだミルクおばちゃんちにいるの?」
また話が飛んだ。やれやれ・・・凜子は次第に苛立ってきた。しかし子供相手に怒るのは大人げないと思って抑えた。
「そうだよいるよ。」
「え・・・じゃあ今度の土曜日おばちゃんちいっていい?」
「え・・・なんだい急に?」
「え・・・だって行っていいって言ってたじゃん」
そんなこと言ったっけ?そう言えば清太はメアリーに会いに遊びに来たいとは言っていたような気がするけど、承諾した覚えはなかった。
「え・・・そうだっけ?」
「じゃあ・・・決まりね」
決まりって何が?来るの?うちに?
「あ・・・」
清太は急に何かを思い出したようにそう言った。
「でもおばちゃんちどこか知らないや」
やれやれ、と凜子は思った。
「分かったわ今度の土曜日ね・・・清太くんのアパートまで迎えに行ってあげるから」
「ほんと?ありがとおばちゃん」
「うんまあ・・・そうだな・・・昼の1時くらいにはいくから待ってて」
「うん分かった」
「それじゃあね」
そう言って凜子はちゃんと伝わっただろうかと心配になりながらも電話を切った。


次の土曜の一時頃に凜子が清太のアパートまで迎えに行くと待ってましたとばかりに清太はドアの外に飛び出してきた。
「おばちゃんこんにちは」
「こんにちは」
そう言って二人は凜子のマンションの方へ向かった。
隣近所なので歩いて5分もかからない距離だった。
そしてあっという間にマンションについた。
「え、ここがおばちゃんち?でかいね!」
どうやらこのマンション全部が凜子の家だと思ったようだった。
可愛いボケに少しだけおかしくて笑いそうになってしまった。
「違うよ部屋が別々にあるの。ここはマンションだから」
「マンション?」
「そうマンション」
といっても小さい子に意味が分かるのか謎だった。そもそもこの子は何歳くらいなんだろうか?5歳から7歳くらいには見えたが聞かないと分からなかった。
「清太くんって何歳なの?」
「僕?6歳だよ。」
やはりそうだった。凜子の勘は当たっていた。
「じゃあ小学校一年生?」
「うん」
なるほど、と思った。なら平日は学校に行ってるのか。
そんな会話をやり取りしながら二人はエレベーターに乗り凜子の部屋のある305号室の前まで来た。
「ここが私の家よ」
そう言って凜子はドアを開けた。
「さあどうぞ」
「おじゃましまーす」
親の教育がちゃんと行き届いているのか一年生の割にはちゃんと挨拶はできているようだった。
「どうぞどうぞ」
清太は凜子のマンションの中へ入っていくと
「わーけっこうひろーい」
びっくりしたようにそう言った。
自分の年収ではこれくらいの広さの賃貸マンションに住むのがやっとだったので、もっと成功している人からしてみればちんけなマンションだと思っていた。しかし、清太が住んでいるあのボロアパートに比べれば十分すぎるくらいの広さなのだろう。
「まあ別に広かないよ」
少しだけ照れるように凜子はそう言った。
「そこにソファーあるからくつろいでて。今紅茶だしたげるから」
「ありがとうおばちゃん」
「いえいえ」
清太は言われた通りリビングのソファーに腰かけた。
するとキッチンの横の方でうとうとと眠っていたメアリーが突然目を覚まして清太の方へと向かっていった。
「あ、ミルク!」
ミルクことメアリーが自分の足元に方へやって来たので清太は大喜びした。
清太は久しぶりにミルクと会えて心底喜んでいるようで抱きかかえてなでなでしたり、持ち上げて高い高いをしたりしていた。ミルク自身が喜んでいるかは分からなかったが、子供とネコが戯れる姿はとても微笑ましい光景だった。
「ミルク元気だった?」
清太がそう言うと
「にゃー」
とミルクは鳴いた。
「どうぞ」
凜子はソファーの前のテーブルに紅茶を置いて清太に差し出した。
「ありがとうございます」
清太はそう言ってちょっとだけ紅茶を飲んだ。
作品名:ネコと少年とお局と 作家名:片田真太