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ミソジニー

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「ミソジニー (英: misogyny) とは、女性や女らしさに対する嫌悪や蔑視の事である。女嫌い(おんなぎらい)、女性嫌悪(じょせいけんお)、女性蔑視(じょせいべっし)などともいう。男性側のミソジニーの例として、女性に対する性的暴力やセクシャルハラスメント、制度的差別などに加え、広告や映画、文学テクストなどにおける女性を憎む表現などが挙げられている。また、これはミサンドリーにも見られる傾向。 女性全般は嫌いだが、女性に性欲を感じることもあるし(創作物のみ、女体のみというもの、バイセクシャルや性同一障害の者もいる)、好きな女性が出来ることもある。」(Wikipediaより抜粋)

俺は生まれてこのかた女を好きになったことがない。なぜかと言われても何となくでしか分からない。一つ何か原因をあげるとしたら家庭環境だとも思う。自分としてはごく普通の家庭で育ちごく普通に育ってきたつもりだった。いや、正確には心の中でできればそう思いたかったとでもいうのだろうか。でも、世の中何事も自分の思い通りにはいかないものだ。そして、非常に残念なことだが、自分の気持ちとは裏腹にうちの家族はほかのそれとは何かが決定的に違う雰囲気があると言わざるを得なかった。それについては話すと長くなるので、まずは手始めに俺が高校に入学してからの話をしたい。というのも高校に入学して以来まわりのやつらがまるで急に盛りのついた犬みたいに次から次へと彼女をせっせと作り始めて、週末にデートに行っただの、初めて女とやった初体験が感動と興奮の嵐だったとか、そんな下世話な話ばかりし始めたんだ。学校にいる間中散々そんな話を聞かされてきたせいか、俺は頭がおかしくなるほどとてつもなく憂鬱な日々を送ってきた。つまらない日常の記憶で胸が張り裂けそうになる日だってある。中学の頃までは平和そのものだった。まだみんなそれほど彼女もいなかったし、男同士で集まることのほうが圧倒的に多かった。毎週恒例のように野郎だけでたまり場みたいに誰かの家に集まってはバカみたいに長時間テレビゲームをしたりもしたし、たまにコンビニに行ってビニール袋に見事に包囲されたエロ本を誰がレジまで持っていって買いに行くかなんてじゃんけんで決めたりして、自分がその罰ゲームに負けたときのあのドキドキしたスリル感といったらたまったもんじゃなかったが、なぜだか心臓が破裂しそうなくらい異様に興奮したし、そしてそれもそれなりに楽しい思い出だった。そんな風にみんなでバカ騒ぎして普通に過ごしてればそれだけでよかった。たったそれだけで楽しかった。そしてそんなことばかりやっていても誰にも何も文句を言われなかった。それにそれが普通だと思ってた。でも、高校に入るとみんな目の色変えたように彼女作りにいそしむようになった。おかげで仲の良かったやつらとあまり頻繁に遊ぶこともなくなった。そして悲しいことに段々と男同士でバカやったりすることもなくなってきた。俺は勉強もあまり好きじゃなかったし、部活は帰宅部だったし、次第に平日は学校から帰ると好きな漫画を読んだりするようになったし、週末は根暗と言われても仕方ないくらいひとりきりでテレビゲームをするのに没頭する生活へと変わっていった。何故かたまに気が向いたらドラマを見たり小説を読んだりすることだけは好きだったが、別に趣味といえるほどのものでもない。通っていた嫌いな塾も高校受験に受かってからはもう必要ないからって入学と同時に晴れてやめたし、今は習い事もしてない。特になりたいものなんて何もないし、将来に夢も希望もない。こんな学校生活に何の意味があるんだって、時々クビを吊って死んでしまおうか?とか馬鹿げたことをふと思ったりもする。なんてそれはさすがに大げさな話だけれど。
そんなこんなで、高校生になったときくらいからか中学時代までの能天気そのもので意気揚々とした気分なんて次第にどこぞへと吹っ飛んでいったし、非常に空っぽで空虚な、あるいは陰鬱ともいうべきなのか?そんな形容詞が非常にお似合いの学生生活を日々淡々と送っていた。そして、そんな折の中、段々と自分は何かおかしいんじゃないかって思い始めた、というかそう思わざるを得なくなったといったほうが正解なのかもしれない。なぜ自分はこんなにも毎日が憂鬱なんだろう?なぜこんなにも孤独なんだろう?まわりのやつらはみんな楽しそうなのに・・・(それがただ楽しそうに振舞っているというだけなのかは俺には到底はわからないが・・・)俺はほかのやつらとは何かが違う。そう思い始めた。いわゆる世間でよく言われる中高生にありがちなこの時期特有の色気づいた思春期の悩みというやつだったりするのだろうか?こんな無味乾燥で空虚なくだらない人生を生きている意味が果たして本当にあるのだろうか?うんざりする世の中に一体全体何の意味があるんだろうか・・・それだったらそれはいつしか大学生になったり大人になったりすればみんなと同様にいずれ嵐の後の静けさみたいに何事もなかったかのように自然と通り過ぎていくような、いわゆるはしかのようなものだったりするのだろうか?いや、でもそれとも何か違う。決定的に何かが違うんだ。なぜそう思ったか?そう思ったきっかけは・・・実は、そんなに単純なことではないけれど・・・自分はもしかしたら・・・女嫌いなのか?(人前でカミングアウトするのは非常に勇気が必要なことだけれど・・・)って意識するようになってからなんだ。それでさっき突然背中が急にむずかゆくなったみたいにいてもたってもいられなくなって、ネット中をまるで漁るかのように一心不乱に検索してみた。そしたら運命的なのか偶然なのか知らないが、ミソジニーって聞きなれないいかにもいぶかしげに聞こえる単語にたどり着いた。女嫌いをミソジニーっていうそうだ。さらにネットで詳しく調べてみると、正確には女を嫌い、女を差別をする男のことを指すらしいけど、難しい用語の意味は高校生の俺にはあいまいにしかつかめない。でも、自分は女性に対して卑しい差別意識なんかこれっぽっちももったことなどないし、どちらかというとただ単に女が意識的に苦手で嫌いってやつなのかもしれない。そうすると、俺はこのミソジニーという単語に分類されるようなタイプの人間とはいえないのかもしれない。


「ちょっと、蒼太?ご飯できてるわよ?」
ネットでミソジニーについて調べながらそんなことをああでもないこうでもないとしきりに考えていたら部屋の外の階段の下から姉貴のどでかい声がしてきた。どうやら夕飯の時間みたいだった。俺は急いでシャットダウンのボタンをクリックしてノートパソコンを閉じた。
「ちょっと聞いてんの?」
「はい、今いくよ。」
俺はまるで学校や会社に遅刻しないように発車間近の満員電車にギリギリ飛び乗る学生や会社員のように大慌てで階段をおりていった。
「何度呼んだらわかんのよ?聞こえてるなら返事くらいしなさいよ」
階段を降りると廊下に姉貴が仁王立ちのような構えで立っていた。
「ああわりー」
そして姉貴は突然すきを狙ったかのように俺にいつもの強烈な平手チョップをガツンとかましてきた。
「いて、何すんだよ?」
作品名:ミソジニー 作家名:片田真太