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ピアノマン

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ベテラン。そういわれるのもなんだかいやだった。もう若くはないってことなのか・・・




アイドル祭2016は大手テレビ局のスタジオの特設ステージにて行われた。

有紀凛の出番になると声援がめちゃくちゃ高まった。

「凛ちゃーん」

「愛してるよー」

とかオタクの声がハイテンションで響いた。

オタクの声援がすさまじかった。

美樹はステージの裏でそれを眺めていた。

「何よあれ、オタクの女神とか言っちゃってさ。気持ち悪い」

アニメの世界はよく分からないが、ファンの勢いに美樹はなんかぞっとした。

しかも有紀凛はオタクファンたちにウィンクしたり手を振ったりしていた。

「何あれ・・・新人のくせにもういっちょ前のぶりっ子サインかしら」

スタッフの人が勝田マネージャーに何やら話しかけてる。

「美樹ちゃんそろそろ出番だってよ。」

美樹の出番が来たようだった。美樹はステージに上がって行った。

「藤谷美樹でーす。皆様お待たせいたしました。今年もとりをやらせていただきます!」

「美樹ちゃーん!」

有紀凛の声援があまりにすさまじかったのでさすがの美樹もとりをやりづらくなった。それに自分の方が何か声援が少なくない?と思った。

そう思ったら美樹は急に焦りだして歌いだしを間違えてしまった。美樹らしくないミスだった。

「すみません、もう一度お願いします!」

ファンはざわざわしてたが、一人のファンが

「美樹ちゃん、あせらないで!そういう美樹ちゃんも好きだよー!」

と言ってくれたのでその場の雰囲気が和んだ。

そして彼女はもう一度歌いだした。



アイドル祭2016の楽屋

「美樹ちゃんよかったよ。お疲れ様」勝田は相変わらずいつも元気である。

売れっ子アイドルの超多忙なスケジュールをすべて管理していて自分もそれと

同じくらい忙しく動き回ってるのにいつも元気バリバリだった。昔、10年くらい前かつての伝説の超スーパーアイドル 月野令のマネージャーをやってたとか。その実績が買われてか、当時注目されていて売出し中だった藤谷美樹をスーパーアイドルに導くべきマネージャーに抜擢されたそうだ。

初めて会ったときのことは今でも忘れない。

「大丈夫、美樹ちゃん僕がついてるから安心して!あははは」

勝田はそんな感じで話しかけてきた。初対面なのにやたらハイテンションだったのを美樹は覚えていた。

確かに時々遅刻くせはあるものの、仕事は超がつくくらい優秀で非常にできる。もう40代らしいが、普通はマネージャーは若手がやるのだが、彼のようにマネージャーが好きでいつまでもやる人もいるらしい。

「なんなのよあれ?有紀凛って子」

「どうしたのさ美樹ちゃん」

「私のより声援が大きくなかった!?」

「気にしすぎだってストレスは美容によくないぞ。あまり気にしないで美樹ちゃんは美樹ちゃんらしくしてればいいんだよ!じゃあねお疲れ様!」

勝田はいつものハイテンションぶりで部屋を出ていったが美樹は有紀凛のことがまだ気になっていた。イライラしてきたのでタバコに火をつけて楽屋で吸った。けむりが楽屋中を覆った。





松田優はガソリンスタンドのアルバイトを終えて、駅前の屋台のラーメンを食べていた。屋台のおじさんに

「最近どうですか、景気は?」と聞かれた。

普通の会社員だと思われたのだろうか、優はよく分からないので

「さあ、ちょっとわからないです」

と答えた。

「みなさんどこも不景気で大変みたいですねー」

必死にいろいろ話題を振ってきたが

優はよくわらかないのでとにかくうなずいていた。

食べ終わった後に財布を取り出すと、勝田という男の名刺が見え隠れした。

少し気になったが勘定を払って自宅まで歩いていった。

今夜は比較的夜空はきれいだった。

黒い猫が自分の前を横切って行った。

「不吉だ・・・」

道理でコンペにまた落ちたわけだ・・・。





松田優は自分のぼろアパートに帰ると、机の横に置いてあったYAMAHAのシンセサイザーで自作曲を弾いた。ぼろアパートなので隣の部屋に響かない程度の音で・・・

そんな時、優の音大時代の友達の鎌田彩から電話があった。彼女は卒業後作曲活動をしたりバンドでキーボーディストをやっていたが、自宅でピアノや作曲の先生もしながら生計を立てていた。

「ひさしぶりー!」

「おう、久しぶり」

「ねえ、今度さ、ゼミのみんなで飲まない!?教授も呼んでさ・・・なんか高林教授が、論文で賞を取ったらしいのよ?」

この前教授に会ったときはそんなこと言ってなかったが彩はそのことを知っていたらしい。

「ゼミの飲み会なんて何年振りだよ。卒業してから一度もあってないやつとかもいるよ。」

「加藤くんとか?あーそういえば、私も全然会ってないや。何か普通に就職しちゃった人たちとか全然疎遠になっちゃったよね・・・」

彩もゼミの人たちとはたいぶ会ってないらしい。

「まあでも、今私いろんな人に声かけてるから、決まったらまた連絡するね!」

ぶちっと電話が切れた。

「おい!」

「行かねーぞ」優はためいきをつきながらそうつぶやいた。





藤谷美樹はテレビ局のスタジオの食堂で昼ご飯を食べ終えて階段を下りようとしていた。すると、階段の途中で野々宮妙子とすれ違った。

「あら、これは七光りのスーパーアイドルさんじゃない?」

相変わらずの嫌味な言い方だった。

「何よ、何の用?わたしあんたみたいに暇じゃないの、これからラジオ局とか行ったり大忙しだから」

「ふん、どうせもうすぐにでも忙しくなくなるわよ。あと何年もつのかしらアイドルなんて。私たち真面目に演技をしている女優からするとあなたみたいな七光りのアイドルにドラマの曲を歌われるって迷惑なのよね。ドラマが軽く見られちゃうのよ。視聴率は取れても」

「あっそ、よかったはね、あなただけじゃ視聴率なんて取れないだろうからね」

嫌味の言い合いだった。

「ちょっと、あんた!少し売れてるからって生意気よ」

「あ、そう。ならあんたも売れるように努力すれば?あの大根演技じゃね」

止まらなかった。

「ちょっと、なんなのよ!」

取っ組み合いの喧嘩になり始めた。テレビ局の社員が

「おいちょっとやめろよ二人とも」

仲裁しようとして止めに入った。

「あなたは関係ないでしょ?」

喧嘩が始まると野次馬がどんどん集まってきた。





何だかんだで優はゼミの集まりに参加することにしてしまった。バーレストランのようなところだった。予算が3000円くらいでいいってことで参加したのだが、その割になかなか立派なレストランだった。

「優!」鎌田彩が手を振った。

高林教授も来ていた。

「すみません、遅くなって」

優は教授には挨拶した。ほかの人たちも優に手を振った。

ぎりぎりまで行くのはやめようかとか考えていたがドタキャンするのも失礼なので参加することにしたため、家を出るのが少し遅れてしまった。

ゼミのメンバーは25人くらいいるのに教授を含めてたったの8人くらいしか

参加してないようだった。

加藤もいた。
作品名:ピアノマン 作家名:片田真太