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ピアノマン

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鎌田彩は自分の所属しているロックバンドの話をしだした。何で路線をロックに変えたかを話し出した。

「中々曲が売れなくて採用もされない日々であせってたのね・・・以前所属していたバンドでメジャーデビューを狙っていたんだけど、曲作るボーカルに作曲センスがなくてさ・・・それで私が曲を書きたいって言ったらさどうなったと思う?彼ら私の作る曲が気に入らなくて音楽の方向性でもめて解散してしまったのよ。そんな中で自分に是非曲を書いてほしいって今のロックバンドからスカウトされたのよ。よくよく考えたら私の作る曲ってロック寄りのもかなりあるのかなって。それで、ボーカルが私の曲ものすごくうまく歌ってくれて本当ぴったりなのよ・・・今回こそは絶対うまくいくって思ってるの」

優は彩がロックバンドに入った意味がやっと分かった。

「でもだからって好きでもないロックをやるのか?」

「好きとか好きじゃないとかじゃないのよ。自分を必要としてくれるからよ。それに売れそうだし。」

「でもそんなの自分の信念とは違うんじゃ・・・」

「そんなの優にはわからないよ。自分の信念だけじゃうまくなんかいかないの。やりたい音楽だけやったってうまくいかないのよ。」

「別に俺だって全然売れてないよ。事務所も解雇されるかもしれないし。この前メールしただろその話。」

「嘘嘘・・・本当は才能あるくせして・・・その藤谷美樹ってスーパーアイドルさんを感動させちゃうくらいのね・・・」

彩は酔っているようだった。彩は酔うとたまに絡んでくる。

「おい、飲みすぎだぞ。酔ってるんじゃ・・・」

「うるさいなー。いっそのことその子に楽曲提供でもして一躍有名にでもなれば?コネがあるんだからさ。利用しろよ」

完全によっている。

その後

「あーもう」

と言いながら彩はバーカウンターにうつぶせになって寝てしまった。

「ったくしょうがねーな」

寝てしまったので、優は自分のアパートまで彩を連れてってベッドで寝かせた。

「うーん、うーん」

彩がもだえながら優のベッドで寝ていた。

「ほんとうしょーがねーな」

優は仕方なくベッドの横の床で寝た。





次の日の朝優は起きるとベッドには彩はもういなかった。

テーブルの上に書置きがあった。

「昨日はごめん・・・なんかからんじゃったみたいで・・・・気にしないで!

夕べぐっすり寝たらすっきりしました!ではお邪魔しました。 彩」

そう書いてあったので優はほっとしてため息をついた後に少し笑った。





優は高林教授の作曲ゼミで講師のアルバイトをしていた。

「今日は我が高林ゼミのみなさんの先輩である、松田優さんを講師にお迎えました。私の元教え子でとっても優秀で音楽にハートのある人ですから、しばらくの間みなさんのご指導の手伝いをしてもらうことにしました。」

優も自己紹介をした。

「宜しくお願い致します。」

優は後輩たちのデモ音源を聞いて一人ひとりアドバイスをしていった。

「ここはもっとベースを聞かせて、ドラムの音はもっと厚くした方が・・・」



ゼミが終わった後、優は高林教授と大学校舎内を歩きながら話した。

「どうですか?うちのゼミの生徒たちは?」

高林教授が優に聞いてきた。

「はい、なんとも言えませんが、高林教授のゼミらしくていい子が多いです。まだ、分かりませんが、見込みのある子が何人かいました。」

「そうですか、きみにそういってもらえるとこっちも嬉しいですよ。本当はね、みんなの夢をかなえさせてあげたいんですけどね・・・でもね、やっぱり芸術の世界は熾烈な競争ですからそういうわけにもいかない。私はそんな世の中が変わればいいと思ってます。でも現実はなかなか変わらない。なかなか曲が採用されない日々だって続きます。だから生徒たちには誰よりも音楽を愛する心と夢をあきらめない心を教えてるんですよ。技術的なことよりもまずね・・・

だから松田君も彼らにその心を伝えてやってください。」

「はい、僕なんかでいいんでしたら・・・」

「松田君、もっと自信もちなよ。少なくとも君は僕のお気に入りですよ?

僕はこれから研究室に戻らないといけない用事があるんで、じゃあ・・・」

「はい、じゃあ・・・」

そう言って高林教授と別れた。





藤谷美樹の初主演ドラマ「それぞれの明日へ」の撮影が終わった。

シーズンドラマではなく単発の二週連続のスペシャルドラマだったので割と早いスケジュールで撮影が終わったのだった。

藤谷美樹が大勢の関係者に向けて挨拶をした。

「ここまでこれたのは本当に皆様のおかげです。本当にお疲れ様でした。」

拍手が起きた。

その数週間後ドラマは放送された。藤谷美樹の初主演とのことで世間では多いなる話題となり、視聴率は非常に高かった。関係者は万々歳だった。

野々宮妙子はそれが面白くなかった。

彼女はドラマを見ながら藤谷美樹の出てくるシーンで彼女を恐ろしい目でぎろっと睨んだ。



野々宮妙子は自分の所属する事務所の社長にどなりつけた。

「ちょっと何で私がまた藤谷美樹主演ドラマの脇役に決定なんですか?」

「この前の二週連続もののドラマの視聴率が好評だったんでね・・・だからまた続編を半年後にやろうってことになって・・・だからお願い!」

「いやですよ、あんな演技のド素人のサポートなんて」

「そんなこと言わずにさ・・・妙子ちゃん」

野々宮妙子は藤谷美樹に対する憎しみがまたましてしまった。





松田優は藤谷美樹とボーリング場に来ていた。

藤谷美樹がボーリングをやりたいと言い出したからだ。

藤谷美樹はスペアを取った。

「やった!」

「何でボーリングなんだよ・・・」

「私、普段マネージャーに禁止されてこういうところ来ちゃだめなのよ。アイドルは指とか怪我したらよくないからって。あなたがいれば言い訳できるでしょ?誘われたって言えばいいから・・・」

「あのな・・・俺をそんなことで利用するなよ。それに、こんな人がたくさんいるところばれちゃうんじゃ・・・」

「別に変装してるから大丈夫よ。」

「そういえば最近曲作ってる?」

「うん?いやーさっぱりだな・・・」

「お、珍しく弱気?」

「俺はいつもこんなんだよ」

「嘘だー」

「ほんとうだって」

そういうと優はボールを投げだした。



そんな会話をしていると、同じボーリング場に和賀直哉が友達と来ていた。

「おい、和賀あれ松田優じゃね?」

「ん、あーまじか。おー、本当だわ。超偶然だな。」

「あの隣にいる女だれ?超でかいメガネしてて逆に超目立ってるよ。」

「あーそうだな。ん?」

和賀はどっかであの変装の女を見かけた気がする。

でも思い出せない・・・

誰だっけ?





優は休みの日にまた、泉と会っていた。

今度は水族館だった。

イルカのショーを見たり、水槽のいろいろな魚を見ていた。

水族館の休憩所で焼きそばやたこ焼きを食べることにした。

「楽しかったね」

「うん・・・」

「こんなところふらふら遊びに来てていいのか?練習とかあるんじゃ・・・」
作品名:ピアノマン 作家名:片田真太