* 閨秀詩人ランゲッサーの異世界 : 中世の騎士とミンネ
--そんなこともないが、今は愉しんでいる、独り身も悪くはないし、この方面の自由は満喫しているからね・・
--きみは母親と暮らし、長男じゃないが面倒を見ているというし、・・
--そんなプライベートなことは云わんでもいい。桑子くんはその点、結婚しているが、自由はあるのかい、機会を見て北の外れの北海道にも来なよ、 遠慮せずに・・
-- まあ、そのうちにね、近いうちに会いたいものだな。・それはそうと山陽に戻ると、彼は40歳を機に、つまり不惑の歳を境にして文運も生活もぐうんと上向いていったという。
放蕩の癖はあまり変わらずだったらしいがね。そして、学芸に傾注していったのだが、放蕩こそないものの、徳丸くんも論集に研究発表は怠りなく専心しているが、きみも禁欲であって悪いことはないが学者ばかりじゃ、そこに相克らしきものがないのは・・・とおもったりしたものだから・・
-- 余計なお世話だが、有難く受け賜わっておくよ、・・Danke! ...
その時、一瞬、徳丸くんの目が鋭く光り、ぴくっと頬が引きつった気がしたのは何故なのだろう、と道之助は思っていた。・・・
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4 . : 俳句選:--->>> ⑴
・夕暮れや 汝れに好かれて 三千里
・蓼喰ふ虫も もの好きなれや 長きかな
・苦笑ふ メタボの汝れや 人なみと
・かくもまあ 長き長き 汝れのしつこさ
・好くも厭ふも 超ゑゆかんか 長き道
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* 俳句選:--->>> ⑵
・川べりに 波と遊ぶや 紋白蝶
・石にも 柔和さありや 汝が隠棲
・鞍の上 近づき見れば 名もなきひと
・きりぎりす 奥津城もとめて 去年(こぞ)の秋
・山嶺(さんれい)に 白き木霊(こだま)や 朋が逝く
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5. 三人の女 ;--
桑子道之助氏の優雅な青春交遊抄 より--
道之助には、今なほ忘れ得ぬ三人の女性がゐた。
⑴ :第一の女性:---->>
ひとりはイエスの信仰に熱心な、もの静かな女性であった。
大学のとき四年間一緒であった彼女の父は実業家で、その代からイエスの信仰に厚い、或る地方の名だたる名家であった。
彼女のこころは澄み、聖女のようなところがあった。が、少女のやうな前髪を垂らした彼女は決して、異性をつよく魅了するに足る女ではなかった。
のみならず、文学を、ひとの心を倫理の上からみて惑わせる対象と決め込み、イエスの信仰とは相容れなぬと確信してやまぬ古風なところがあった。・・
道之助は何とかして、その誤解を解かないではおれぬ衝動に幾たびか駆られた。彼は文学にこころを専心してやまなかったから。
と同時に、イエスの信仰にこころをいれてゐるひとりでもあった。そこで、彼はかう考えてやまなかった。--:
彼女が同じ歳で自分が同じイエスの信仰にこころを通わす間柄ならば、是が非でも文学における魅力、文学における満ち足りた気持ちを吹き込んでみたいと。>>>---
* 第二の女性:--->>
別のひとりは西洋文学の研究に熱心な、笑顔の美しい女性であった。
学生のとき一緒であった彼女の父は、あるよく知られた企業の重役の一角にいる人だった。
彼女のこころは美しく、知的に優れていた。
が、同情的にみれば、すこしく体のある部分に憐憫せずにはおれぬところがあった。
にも拘わらず、彼女はそんなことには、つゆ拘泥している風には見えなかった。却って、一心不乱に
ドイツロマン派のノヴァーリスNovalisの研究に没頭して、学問を続けてやまぬ人だった。---
彼女に大いなる魅力を感じるとともに、大いなる矛盾も感じないではおれなかった。
彼女は女の青春をとっくに通り越して三十路という歳に近づいていたにも拘わらず、結婚という文字を頭から避けて通している風に見えた。
が、そんな彼女とは人生や文学、愛についていろいろ話したものだった。のみならず、彼は自身のかきとめた何篇かかを読んでもらったこともあった。
ときには彼女の詩の何篇かを、その代償の如く読ませられた。
しかし、彼女はイエスの信仰には、知的な関心以外には、あまり熱心さはみせなかった。...))) **
*第三の女性:--->>>*
Fortzetzung ...