* 閨秀詩人ランゲッサーの異世界 : 中世の騎士とミンネ
【内容・一覧】:
1. Prof. イモヌスと騎士文学講義:
2. カトリック閨秀ランゲッサーの異世界:
Langgässers andere Welt:
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1. Prof. イモヌスと騎士文化: pv.394-.
その日の三時限に、クラシックな一号館の403教室に入ってきたProf. イモヌスは、いきなり黒板に向かって書き始めている。
Minne-Dienst, triuwe, hövischheit, Gottes-Huld..
これを書くや聞き取りにくい小声で講義を始めた。背が高く、銀縁眼鏡をした先生は少しとっつきにくく、それを陰険ね、といって嫌がる女子学生も中にはいる。
声は確かに、聞き取りにくい。
すると、おい、分るか、と隣の席から声をかけてきた男がいる。
まあな、と道之助は手短に応えた。
岩崎は俺には分らんよ、ちっとも、それに興味も湧かないし、とぶつぶつと云う。彼は四年になると、いきなり学生会長になり、そんな気配が平生は微塵もみられなく、クラスの皆は少し吃驚したくらいである。
また、聞かせてもらうから、その時は よろしく と彼はあっけらかんと云った。
すると二人の話声が耳に入ったか、イモヌス先生は、Du,Verstehst du ?..きみ、分りますか、と岩崎を指さして聞いた。
Leider nicht, Ich verstehe das leider nicht.残念ですが、分りません。
すると先生は、Wie schade! Aber doch.,bitte hörst du mir gut zu !. (それは残念。でも、しっかり聴いているように!).
.Aber denn, Wie heißt du ? (ところで、名は?).
Ich heiße Iwasaki .Verzeihen Sie ,Professor...
岩崎です。すいませんでした、先生..
授業が終わると、岩崎は危なかった、こっぴどく怒られるかと思ったが案外と紳士的だったといい、そして、まあ、インテリ神父でもあるし、と胸をなでおろす。
うん、ぼくのほうこそ、ひやひやしたよ、指をさされても仕方なかったから。肩代わりしてもらったようなものだ。Danke,Vielen Dank,と岩崎に詫びをいれる。
いや、気にしないことだ、おれのほうから声をかけたんだから。ところで、triuweって何だい、と聞いてきた。
でも、興味はないんだろう、だから、またにしておこう、と云うと、
triuweっていうのは、中世騎士の徳目のひとつで、主君に忠誠をつくす信義という意味だが と云うと、次は別の講義に出るから、これでと別れていく。
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2.カトリック閨秀ランゲッサーの異世界:より
Langgässer
1899生まれのドイツ・カトリック閨秀作家E.ランゲッサー:Langgässerの短編は、いずれも珠玉のもので「トルソ」のもとに収められている。
道之助が翻訳したものは、ほとんどが本邦初訳といってよく、それらは戦後ドイツ短篇として、いずれもがナチス・ヒットラー時代を背景として書かれ、その中で生き、苦難し、恐怖と不安に耐えた人間像である。
時代の一断面を切り取った これらの中で、「初めての聖体拝領の日」は、ほのぼのとした家族の状況を初めての聖体拝領のミサにあずかるアンジェーラという女の子を中心に描いて明るいし、「兵士の
墓」は長閑な丘に一日を過ごす二人の若い男女を描いて 哀しくも平和である。これらは戦時下に侵した罪意識の消えない男を描いた「囚われの男」や、ウクライナの女「リーディア」などとはまた、違った趣があるものとなっている。
また、訳詩篇の「夏至祭のダフネ」Daphne an der Sonnen-Wendeや「二月の光」Licht am Februar 並びに、「寒い日の光のミサ聖祭」Kalte Licht-Mess はいずれもがⅠ・Ⅱ・Ⅲからなる長い詩で、いずれもが 自然・神話・秘蹟という異世界を描いてユニークなものとなっていて、難解な詩ではあるが 魅力に富む詩篇であると云ってもよいのである。
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閨秀詩人 ランゲッサー全集の 隣には
8冊の小冊子 汝が記念の メルクマールなりしか
Nearby the complete works of Langgässer ,
A German feminine writer ,forms a line the 8 little works,
They are the works, That memorializes your 60. Geburztag.
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*頼山陽の放蕩:---
聞くところによれば、頼山陽は日本三大神経衰弱作家の一人だと言われる。他のひとりは云わずと知れた漱石であり、もうひとりは かの有名な歌人藤原定家というのだが、これに加えて、現代作家では「雲の行き来」や江戸時代の松前藩家老で文人画を嗜む「蠣崎波饗」の評伝など多作で知られる中村真一郎を加えてもいいのだろうが、 それはともかく、ここでは頼山陽1780- 1832)について少しく述べてみよう。
・彼は江戸文明最盛期の文化文政期に活躍した文学者だが、一生、士官することなく、京都の儒者として過ごした。因みに、出身は備後の広島である。
しかし、彼の書いた詩文は一世を風靡し、また「日本外史」と「日本政記」の二大著書によって歴史家として名を馳せていた。・・・