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火曜日の幻想譚 Ⅳ

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384.傷害の動機



 数年前、悲惨な事件が発生した。人気アイドル、豊川 美奈さんが顔に傷を負ったのだ。

 幸い、彼女は一命をとりとめ、操作も順調に進んで犯人もすぐに捕まった。ただ、少々意外だったのは、その犯人が豊川さんの熱狂的ファンだったことだ。

 犯人を捕まえたものの、警察は、犯行の動機までは解明できていなかった。それというのも、豊川さんのアイドル活動は順調そのもので、交際やいわゆる枕営業が発覚したわけでもなかったからだ。
 犯人のほうも、とても礼儀正しいファンで素行も良く、マナー違反や無理に男女関係を強要するようなことは一切なかったという。
 取り調べても本人がかたくなに口を割らない中、集まった情報を整理する。普通ならば決してこのような犯行は起こさないはず、何が彼をそうさせたのか……。そのような思いで調査を進めていく中で、一つだけ気になる情報が出てきた。

 ネット上で、豊川さんが顔を整形しているという書き込みがあったのである。

 豊川さんの熱狂的なファンである以上、犯人はこういったネガティブな書き込みも当然見ているだろう。取調室の犯人に問いただすと、彼は観念して真相を告白した。

 彼はこの心ない書き込みによって、豊川さんが整形しているといううわさが広まるのをひどく恐れたそうだ。このうわさが本当かうそかはわからない。だが広まってしまえば、アイドルとしての活動は台無しになってしまう。しかし、うわさをかき消すのは一般人でしかない自分には難しい。果たして、どうすればいいのか。

 困り果てた結果、妙案がひらめいた。誰もが知るような形で、豊川さんの顔に傷を付ければいいのだ。そうすれば、どちらにしても彼女の顔にはメスが入ることになる。そうなれば、掲示板の整形のうわさなどたわいのないものになるではないか。結局、彼女は顔をいじることになるのだから。


 ちなみに先日、件の書き込みは悪質なデマであることが明るみになったことを最後に申し添えておく。

作品名:火曜日の幻想譚 Ⅳ 作家名:六色塔