火曜日の幻想譚 Ⅳ
386.笑う
ポジティブに生きよう、そう決意した。そうしたら、笑い声以外、耳に入らなくなった。
人々の悲嘆も、悲しい音楽も、心無い人の言葉も聞こえない。耳に残るのは人々の笑い声、それのみ。
楽しい。みんなが笑ってる。僕も自然に笑う。そこには笑い以外、何もない。すごい。こんなに素晴らしいことってないよ。
そうだ。みんなもこうすればいい。そうすれば、笑いの中で産まれ、笑いに包まれて生き、笑顔で死んでいけるよ。
早速、みんなに伝えよう。僕は大声で説明する。けれど、みんなは笑うだけ。話を聞いてくれたのかどうかすらもわからない。
みんな、聞いてよ。すごいことを見つけたんだ。みんなもまねしようよ。どんなに訴えかけても、やっぱりみんなは笑うだけ。
実は、みんなは僕を嘲笑ってるんじゃないかな、ふっとそんな考えがよぎった。