火曜日の幻想譚 Ⅳ
387.うぐいす
うぐいすというのは、鳥の中でも別格な感じがあります。
なんせ鳴き声が「ホー、ホケキョ」です。この変わった鳴き声だけでも相当なインパクトがあります。しかも臆病なので、声はすれども姿が見えないことが多いそうです。小賢しいやつじゃありませんか。その上、春告鳥だの花見鳥だのといった別名が山ほどあります。しかも、そのどれもが風流なのです。うらやましいことこの上ありません。
しかも、ちょくちょく和歌や俳句に詠まれているんです。あの芭蕉や蕪村も詠んでいるし、万葉集や古今和歌集にもしっかりとうぐいすの文字は刻まれています。これを読んでいる皆さんの中で、和歌や俳句に詠まれた方はいますか? そう。彼らは私たちにできないことを、やすやすとやってのけているんです。もううらやましさを通り越して、怒りの感情すらわいてきます。
しかも極めつけはふんです。うぐいすのふんですよ。何でも肌のキメが良くなるそうで、化粧品として愛用する女性がいるんだそうです。他にもにきび予防や衣服のしみ抜きに使われたりと、ふんすらも大活躍なんです。
全く、憎たらしいじゃありませんか。一介の鳥風情がこんなに幅を利かせて。しかも女性の肌や衣服に、自分の下半身から放出したものを塗りつけるんですよ。これ、好きな人にはたまらな……、ああ、いや、これ以上はちょっとやめときましょう。
とにかく、うぐいすというのは、今や鳥界のサラブレッドみたいな存在になっています。鳥界のサラブレッドって、これ、もう鳥だか馬だかよく分かりませんが。とにかく、こんなに調子に乗ってるうぐいすは、他の鳥の権利向上のためにも、少しばかりその地位を譲ってくれてもいいのではないかと思うのです。
特に、このうぐいすとよく間違えられるめじろ。あの鳥には同情を禁じ得ません。彼らを悲惨な境遇から救うべく、私はどんどん支援していきたいと思う所存です。
そう。これが本当の、めじろ推し、というものなのです。