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火曜日の幻想譚 Ⅳ

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394.最近の若いもんは



 街を歩いていると、車が人をはねた。

 運転手は慌てて降りてきて、被害者を抱きかかえる。近くの人がスマホで救急車を呼び、別の人が交通整理を始める。周囲の野次馬たちもゆきすぎない程度に、ことの行く末を見守っている。

 皆がそのように整然と行動をしている最中、少々おかしなやつが現れた。ボロをまとったその若い男は、運転手に近寄ってそっと耳打ちする。
「どうです? 死にますかね」
不快に思った運転手がにらむと、男はすっとその場を離れ、救急車の職員に同じことを聞いた。職員も当然相手にせず、テキパキと被害者をタンカに乗せる。すると男はもう一度運転手に近寄り、今度はさらにひどいことを耳打ちした。
「あの、相当な慰謝料になるかと思いますが、自殺する予定なんかは……」
これには運転手も怒りを抑えきれなかったのか、いきなり男につかみかかった。男は服からかまを取り出し、必死に応戦する。

 野次馬たちが二人を見守っている中、僕はため息をついた。

 死神も世代交代で、ずいぶんお間抜けなやつが仕事をするようになっちまった。こんな要領でやってちゃあ、反感を買うだけで人は死んでくれないよ。全く、これだから最近の若いもんは、なっちゃいないと言われるんだ。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅳ 作家名:六色塔