火曜日の幻想譚 Ⅳ
404.フレンド
スマホでソーシャルゲームをやっていた。
この手のゲームでよく取り沙汰されるのはいわゆるガチャのほうだけど、そのときの僕はなぜかフレンドのシステムが気になっていた。
自分の持っているキャラ一人を選んでおくと、他のユーザーがそのキャラでゲームを有利に進められるというものだ。もちろん他人に使われて終わりではなくそれ相応の報酬も返ってくる。そしてフレンドになると、そのキャラを利用できる確率が上がるのだ。
「……こういうの、あんまりフレンドって言いたくはないなあ」
僕は思わずこぼしてしまう。フレンドっていうのは、精神的なつながりとかあるべきで、こんな強いキャラ目当てでなるもんじゃないだろう、そう言いたかったのだ。
「でも、そういうもんじゃん。フレンドって」
僕の言葉を聞いて、同じくこのゲームをしている姉が、ソファに寝っ転がりながら口を挟んできた。
「あんた、リアルの友だちを考えてみなよ。近所の公園でも幼稚園でも小学校でも、結局は生まれた場所が近かったってだけの仲じゃん」
「……まあ、そうだけどさ」
「実際、東京に行ったら大半が音信不通でしょ。友だちなんてそんなもんだよ」
「でもさあ。その中の数少ない何人かは残るじゃん」
「そういう人たちは、友だちじゃなくてさらに上の親友。友だちなんてその程度の付き合いだよ」
言い終えると、姉は向こうを向いてスマホをタンタンとタップする。普段はこんなにだらだらしているのに仕事はできるらしいし、今回のゲーム内のイベントも姉には勝てそうにない。
「姉ちゃんにはかなわないなぁ」
姉の背中にそう小さく声を浴びせ、僕もゲームに戻る。姉にゲームで勝てないこともそれ相応にショックだが、友人に対する割り切り方が根っこから違うということに、僕はショックを隠しきれなかった。