火曜日の幻想譚 Ⅳ
475.遠くへ行きたい
少しばかり遠くへ行きたい。そんなふうに思った。
そうとなればこれだよな、とばかりにロケットに飛び乗る。
カウントダウンが始まり、炎と煙を吹いて発射されるロケット。僕の住む家が、街が、都市が、国がみるみるうちに小さくなっていく。
そして、いくつかのパーツが分離されていき、ロケットはとても身軽になった。
やがて見えてくる暗黒の世界。
僕はロケットを飛び出して、その勢いに身を委ねる。少しずつ離れていくロケットの残骸と、眼前に迫る永遠の闇。
浮上なのか、沈降なのか、水平移動なのか、もうなんなのかも分からない。
このままどこまでも、ゆっくりとここではないどこかへ進んでいければいい。そう思う。
けど、きっと、星の重力に引かれて、直線軌道が円軌道になって、気が遠くなるほどの時間を過ごして燃え尽きるんだろうな。そんなヴィジョンが目に浮かぶ。もしくは、ブラックホールにでも入り込み、世界の終わりをながめるか。
でも、まあ、そういう最期も悪くはない。ここまで遠くに来れたなら。