小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

火曜日の幻想譚 Ⅳ

INDEX|6ページ/120ページ|

次のページ前のページ
 

475.遠くへ行きたい



 少しばかり遠くへ行きたい。そんなふうに思った。

 そうとなればこれだよな、とばかりにロケットに飛び乗る。
 カウントダウンが始まり、炎と煙を吹いて発射されるロケット。僕の住む家が、街が、都市が、国がみるみるうちに小さくなっていく。
 そして、いくつかのパーツが分離されていき、ロケットはとても身軽になった。

 やがて見えてくる暗黒の世界。

 僕はロケットを飛び出して、その勢いに身を委ねる。少しずつ離れていくロケットの残骸と、眼前に迫る永遠の闇。
 浮上なのか、沈降なのか、水平移動なのか、もうなんなのかも分からない。

 このままどこまでも、ゆっくりとここではないどこかへ進んでいければいい。そう思う。

 けど、きっと、星の重力に引かれて、直線軌道が円軌道になって、気が遠くなるほどの時間を過ごして燃え尽きるんだろうな。そんなヴィジョンが目に浮かぶ。もしくは、ブラックホールにでも入り込み、世界の終わりをながめるか。

 でも、まあ、そういう最期も悪くはない。ここまで遠くに来れたなら。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅳ 作家名:六色塔