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火曜日の幻想譚 Ⅳ

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440.逃げる



 逃げよう、どこまでも。

 何を言われようとも、どんな手を使ってでも、どんなに傷つこうとも逃げ続けてやる。物事に立ち向かうだけが、正しいわけじゃないはずだ。逃げるほうが勇気が必要なことだってあるし、向き合う時間が、無駄なことだってあるはずだ。

 と、いうことで、さっさとトンズラするぜ。

 ほら、始まった。甘えだの、根性がないだのと。でも、そんなことを言われる筋合いはないぜ。だいたい逃げる労力を甘く見過ぎだ。逃走するほうが、よっぽど根性が必要だったりするんだぜ。現状維持でとどまるほうが、逆に甘えているし、根性がないかもしれないよ。

 さあ、逃げて、逃げて、逃げ続けてやる。死ぬまで、いや、死んでからも逃げ続けてやる。この世にどんな偉大なものがあろうとも、逃げ切れないものなんかない。

 俺はいつだってそう信じてるんだ。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅳ 作家名:六色塔