火曜日の幻想譚 Ⅳ
454.orbital
周る、周る、周る、周る。
止め処なく、絶え間なく、間断なく、果てしなく。
僕が地球を去ってから、遠い月日が過ぎ去った。
汚れし地ではもう僕を、知る者、誰もいないはず。
あの日、僕は無理矢理、軌道船に括りつけられたんだ。
周る、周る、周る、周る。
延々と、連綿と、長々と、とうとうと。
もう誰も僕の力に、抗うことはできやしない。
僕の眼からはもう誰も、逃れ得るのは無理だろう。
ひどく虚ろな眼差しで、僕はずーっと見つめてる。
不死の体と魂と、俯瞰視点を行使して。
そうさ。僕はこの地で、死の神として君臨し続ける。
周る、周る、周る、周る。
末永く、息長く、限りなく、淀みなく。
死神の振るいし鎌は、はやての如く降り注ぐ。
狙いし者の脳天を、あっという間に撃ち抜ける。
空の眼窩はぐるぐると、憎き人の子、狙ってる。
空疎な眼から出る光、一瞬にして焼き尽くす。
僕の空っぽの両眼は、死の神の憤りを行使する。
周る、周る、周る、周る。
それからも、これからも、この先も、何時までも。
こうして僕は環状で、人の子たちを眺めやる。
醜い死屍の恰好で、地球(ほし)の行く末、眺めいる。
揺るがぬ神の恨みと、宙の軌道と眼窩の砲。
周る、周る、周る、周る。
とこしえに、とことわに、永久に、永遠に……。