火曜日の幻想譚 Ⅳ
455.天冠への取材
な、何ですか? 唐突に? え、私に用事があるから、話を聞かせてほしい? まあ、いいですけど……。本当に私なんかでいいんですか?
まずはお名前からって、えーと、私は一応、天の冠と書いて、天冠という名前なんです。ちまたじゃ三角巾なんて言われていますけど、ちゃんとした名前があるんですよ。
何をしているかというと、まあ、簡単に言えば死者さんや幽霊さんの頭に乗っかっています。本当の仕事は、えん魔大王に会いに行く際に、失礼のないように私を付けて正装するためのものです。
それで、最近の調子はどうだって? どうもこうもありませんよ。さっきもお話ししましたけど、近頃は三角巾って呼ばれるんです、全く、給食じゃないんですから。
それ以上に、私たち今や、幽霊の頭にくっついているものの代名詞でしょう。まあ、実際に今、幽霊さんの頭にいるので、文句は言えませんけどね。
でも宗派によっては私たちの出番がない場合もあるんで、幽霊の定番っていうのはやめてもらいたい、というのが本音なんですよねぇ。
他に悩みですか。うーん。私たちもちょっとイメチェンしたいって思うときがあるんですけど、やっぱり幽霊といえば、白装束じゃないですか。
でも、いい加減白は飽きるんですよ。なんせ、汚れやすいですからねぇ。いっそピンクのフリフリとか、迷彩柄とか、アニマル柄とか、私たちも思い切ってやってみたいんですけど、やっぱり無理ですよねぇ……。
そんなことを言っているうちに、幽霊さん、取りつきたくて仕方がないみたいですよ。逃げなくて大丈夫ですか? え、もうちょっと?
ああああ、そんなことを言ってる間に……。
あーあ、せっかく話したのに、今の全部、無駄になっちゃったかな。でも録音してたっぽいから、誰かがそれを書き起こしてくれるかもしれないな。
でも、頭に巻いてる布がしゃべるなんて、ことによったら、幽霊よりも不気味かもしれないけどね。