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火曜日の幻想譚 Ⅳ

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457.ガーディアン・フダ



 ガーディアン・ベルというものをご存じだろうか。簡単に言えば、バイクに結びつけるお守りのようなベルなのだが、これに関して、このような逸話があるようだ。

 昔、一人の男がバイクに乗っていた。クリスマスが近いこの日、彼は施設の子どもたちにプレゼントを届けるため、プレゼントを積んで故郷の街へと向かっていたのだ。しかし、途中でグレムリンと呼ばれる小さい悪魔に出くわしてしまった。絶体絶命のピンチに男は観念するが、そこでやってきた2人のバイカーにどうにか救われる。グレムリンたちを追っ払ってくれた2人の男のバイクに、彼はお礼として、小さなベルを結びつけておいた。

 ここからバイク乗り同士で、このガーディアン・ベルを贈り合う習慣が生まれ、今ではお守りとして親しまれているそうだ。


 実は、似たような話を全然別の場面で聞いたことがある。とは言っても、こちらは全く広まっている気配はないけれど。

 昔、ある男が開発したシステムの最終試験を徹夜で行っていた。今でこそ労働環境は多少、改善されたようだが、昔は徹夜など当たり前の世界だった。そんな状況で作業をしていた男だが、いきなり、システムが動かなくなってしまった。そのシステムは明日が納品日。ここで動かなくなってしまったらもう致命的だ。彼は真っ青な顔で、汗をびっしょりかいて原因を探るが、理由が全く分からない。これはもうどうしようもない、退職願を書かなければ。そんなことすら本気で考え始めていた状態だった。

「おい、どうかしたのか」

そのとき、向こうから声がした。同僚がたまたま別のプロジェクトで徹夜をしていたのだ。男はディスプレイの影に隠れていて今まで姿が見えていなかったその同僚に、システムが突然動かなくなったと話をした。
「落ち着いてやってみなよ。俺も見てるからさ」
男は同僚の目の前で、再度システムを起動する。すると今度は何事もなくスルスルと動き出した。安どする男に、同僚は笑いながら言う。
「深夜、たまに機械に悪さをする悪魔がいるんだよ。一人で不安なときによく襲ってくるんだ。俺もよく出くわすけど、こんな業界だから信じてもらえないけどな。じゃ、俺、ちょっと仮眠するわ」
そして、言い終えると持参した寝袋にゴソゴソと潜り込んだ。

 翌日、無事に納品を終えた男は、その足で神社に行き、お札を購入してきた。そして会社に戻ると、深夜、助けてくれた同僚のパソコンにぺたりとそのお札を張ってやり、
「お互い、悪魔には気をつけよう」
と言ったそうだ。そしてそれ以来、その原因不明のトラブルは同僚のパソコンでは起きなくなった。

 最後に一つだけ、グレムリンは交通や機械関係、そしてコンピューター技術にも精通した悪魔だと言われていることを付記して、この話を終わりにしたいと思う。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅳ 作家名:六色塔